【医学部】受験するなら知っておきたいポイント3つ!概要から具体的な対策まで
超難関と言われる「医学部受験」に向けて、まず知っておきたい基本をまとめました。医学部受験の現状を数値で振り返り、合格のための戦略や科目別の対策ポイントをまとめています。最後まで読めば医学部受験の概要がバッチリわかりますよ!ぜひ受験勉強の参考にしてくださいね。
※ ここで解説する「医学部」とは、医学部のうちの「医学科」を指します。
目次
Point①【2022年度入試用】医学部受験の現状と最新情報
まずは医学部入試の現状を整理することから始めましょう。「定員・倍率」「入試難易度」「入試科目」の3つの観点を順に解説します。
定員・倍率
医学部の定員は「長期的に日本の医療体制考えたときに必要となる医師の数」によって増減します。2008年以降は増員が続いてきた医学部定員も、2022年度以降は減少する方向で調整が進んでいます。
受験倍率を見てみると、近年は国公立大で4倍程度/私立大学では13~15倍程度で推移してきました。さまざまな要因から受験生の現役志向・地元志向が続いており、難関の医学部を敬遠するケースも散見され、倍率は緩和傾向となっています。
2021年度入試を数値で振り返ってみましょう。
まず、医学部医学科の募集定員は以下の通りでした。
◎ 国公立大学
募集定員 | 募集定員の内訳 | |||
---|---|---|---|---|
前期日程 | 後期日程 | 学校推薦型 | 総合型 | |
5,509 | 3,597 | 408 | 1,233 | 228 |
◎私立大学
募集定員 | 募集定員の内訳 | |||
---|---|---|---|---|
一般選抜 | 学校推薦型 | 総合型 | 他 | |
3,643 | 2,876 | 565 | 82 | 38 |
受験倍率は以下の通りでした。
◎ 国公立大学
志願者数 | 合格者数 | 倍率 | |
---|---|---|---|
前期日程 | 14,773 | 3,762 | 3.9 |
後期日程 | 7,110 | 477 | 14.9 |
◎私立大学
志願者数 | 合格者数 | 倍率 | |
---|---|---|---|
全日程合計 | 91,225 | 6,792 | 13.4 |
※ 参考:河合塾『医進塾』医学部入試結果分析2021
難易度(偏差値・ボーダーライン)
医学部が大学入試において「最難関の1つ」と言われるのは事実です。共通テストが必須となる国公立大学では、ボーダーラインは最低でも80%・最高で91%。2次試験の偏差値は62.5~72.5となっています。
私立大学の一般入試の偏差値を見ても、60~72.5。早稲田大学の創造理工学部が62.5~65.0ですから、早稲田大学に合格できる実力があって初めて医学部入試の土俵に乗れるということになるのですね。
◎ 国公立大学
※ 数値は「前期日程」のものです。地域枠、推薦枠等は除外。
※ オレンジ色は最低値、青字は最高値を表します。
大学名 | 共通テストボーダー | 2次試験偏差値 |
---|---|---|
旭川医科大学 | 80 | 65 |
北海道大学 | 86 | 65 |
札幌医科大学 | 82 | 62.5 |
弘前大学 | 82 | 62.5 |
東北大学 | 86 | 67.5 |
秋田大学 | 82 | 62.5 |
山形大学 | 82 | 62.5 |
福島県立医科大学 | 82 | 62.5 |
筑波大学 | 86 | 65 |
群馬大学 | 83 | 65 |
千葉大学 | 88 | 67.5 |
東京大学 | 91 | 72.5 |
東京医科歯科大学 | 90 | 70 |
横浜市立大学 | 88 | 67.5 |
新潟大学 | 85 | 65 |
富山大学 | 82 | 62.5 |
金沢大学 | 83 | 65 |
福井大学 | 82 | 62.5 |
信州大学 | 83 | 65 |
岐阜大学 | 82 | 65 |
浜松医科大学 | 82 | 65 |
名古屋大学 | 87 | 67.5 |
名古屋市立大学 | 84 | 65 |
三重大学 | 82 | 65 |
滋賀医科大学 | 82 | 65 |
京都大学 | 90 | 72.5 |
京都府立医科大学 | 82 | 65 |
大阪大学 | 88 | 70 |
大阪公立大学 | 86 | 67.5 |
神戸大学 | 87 | 67.5 |
奈良県立医科大学 | 83 | 65 |
和歌山県立医科大学 | 82 | 62.5 |
鳥取大学 | 82 | 65 |
島根大学 | 82 | 65 |
岡山大学 | 86 | 65 |
広島大学 | 85 | 65 |
山口大学 | 83 | 65 |
徳島大学 | 83 | 62.5 |
香川大学 | 82 | 62.5 |
愛媛大学 | 82 | 65 |
高知大学 | 80 | 62.5 |
九州大学 | 86 | 67.5 |
佐賀大学 | 82 | 65 |
長崎大学 | 83 | 65 |
熊本大学 | 83 | 65 |
大分大学 | 81 | 65 |
宮崎大学 | 82 | 65 |
鹿児島大学 | 83 | 65 |
琉球大学 | 82 | 65 |
◎ 私立大学
※ 数値はすべて「一般入試」の最も募集人員が多い日程のものです。地域枠、推薦枠等は除外してあります。
※ オレンジ色は最低値、青字は最高値を表します。
大学名 | 個別試験偏差値 |
---|---|
岩手医科大学 | 65 |
東北医科薬科大学 | 65 |
国際医療福祉大学 | 65 |
自治医科大学 | 67.5 |
獨協医科大学 | 62.5 |
埼玉医科大学 | 62.5 |
北里大学 | 62.5 |
杏林大学 | 65 |
慶應義塾大学 | 72.5 |
順天堂大学 | 70 |
昭和大学 | 67.5 |
帝京大学 | 65 |
東海大学 | 65 |
東京医科大学 | 67.5 |
東京慈恵会医科大学 | 70 |
東京女子医科大学 | 65 |
東邦大学 | 67.5 |
日本大学 | 67.5 |
日本医科大学 | 70 |
聖マリアンナ医科大学 | 62.5 |
金沢医科大学 | 65 |
愛知医科大学 | 65 |
藤田医科大学 | 65 |
大阪医科薬科大学 | 67.5 |
関西医科大学 | 67.5 |
近畿大学 | 65 |
兵庫医科大学 | 65 |
川崎医科大学 | 60 |
久留米大学 | 65 |
福岡大学 | 65 |
※ 参考:河合塾大学情報サイト「Kei-net」大学検索システム
入試科目
医学部の入試科数は多めです。良く見られる組み合わせを下にまとめました。
◎ 国公立大学
共通テスト:英語、数学ⅠAⅡB、国語(現代文・古文・漢文)、理科2科目、地歴公民1科目
2次試験:英語、数学Ⅲ、理科2科目、面接
◎ 私立大学
個別試験:英語、数学Ⅲ、理科2科目、面接/小論文
入試科目が少ない大学・学部も増えるなか、医学部の多くは理系型受験の最大科目数を課します。また必ずと言っていいほど「面接」が行われるのもポイント。大学によっては小論文を課すところもあります。
受験生はこれらのすべての科目で「共通テスト:80~91%」「2次試験・個別試験偏差値:62.5~72.5」をとれる学力を身につけつつ、加えて面接や小論文の対策も行う必要があるということです。
Point② 医学部合格戦略
医学部は「少ない定員を多くの受験生で争うこと」「入試科目が多い上に、ボーダーラインが高いこと」という理由により、大学入試で最難関の1つとなっていることがわかりました。
ここからはそんな医学部に合格するための「戦略」について考えていきます。科目ごとの勉強法は、もう1つ後ろの項目にまとめましたので、合わせてご覧くださいね。
国公立大学編
国公立大学の医学部を志望する場合に避けて通れないのが「共通テスト」です。共通テストのボーダーラインは「80~91%」ですが、合格に余裕を持つためにも「85~95%」を目標に据えると良いでしょう。
「ボーダーライン」とは、合否が分かれる境目を指します。つまりボーダーラインぎりぎりの得点は、合否当落線上ぎりぎりということ。2次試験や面接で何が起きるかわからないということを踏まえても、共通テストでできるだけ得点を重ねておくことが基本路線です。
また国公立大学の中には「第一段階選抜」、いわゆる「足切り」を共通テストの結果によって行うところもあります。共通テストで高得点を取れていないと、そもそも2次試験を受けられないこともあるということです。
国公立大学の二次試験は医学部専用の問題が用意されるというわけではなく、他の理学部と同じ問題が使われます。ただし「答案の完成度」が他学部より高いことが特徴。記述式の問題も完答を目指していきましょう。
私立大学編
私立大学の個別試験は、他学部と同一問題を課す大学もあれば、医学部専用の問題を用意する場合もあります。志望大学の過去問に取り組み、傾向を把握することから始めてください。
私立大学は学校によって出題形式や難易度に幅があるのが特徴です。中には難問・奇問と呼ばれる極端に難しい問題や奇抜な発想が必要なもの、あるいは試験時間内に解き切れないほど解答過程が多いものなどを出題する大学もあります。個別試験の目標は「完答すること」ではなく、「合格点をとること」です。自分が解くべき問題・解かなくても良い問題を見極める目を養っておきましょう。
面接や小論文も事前の準備が肝心です。医療系の質問やテーマが出されることも多いのですが、大学が見たいのは「受験生の医師適性」や「総合的な人間力」です。将来の目標やこれまでの経験、また人文社会科学系や芸術系など、幅広い話題に対応できるよう練習しておきましょう。
狙い目の医学部入試枠はここ!
高難易度・高倍率の激戦となる大学が多い医学部入試ですが、「狙い目」ともいえる募集枠があります。
まず「地域枠」をご紹介しましょう。これは医学部独特の募集枠で、地方や僻地における医師確保のために始められた制度です。したがって卒業後は、指定された地域(病院)で一定期間勤務することが条件となります。
出願のためには大学側が提示する「地域条件」を満たしていることが必要ですから、誰でも出願できる一般枠に比べて、そもそも出願できる受験生が少ないのです。
地元出身者であることが条件となっている大学が多いのですが、近隣県出身者も出願できる場合もあります。
2つ目に狙い目なのが「推薦入試」です。私立大学が行っている「指定校推薦」と、募集人員が比較的多めの「公募型推薦」とがあります。いずれも学校長の推薦が必要、指定校推薦は高校内選考を通過する必要もあります。
出願するためには「評定平均が〇以上であること」といった、成績条件がつけられていることがほとんどです。つまり評定が高い人しか出願できない、誰もが出願できるわけではないということですね。医学部が推薦入試を行っていることは知らない人も多いので、狙い目ですよ。
Point③ 科目別・医学部受験のための勉強法
ここからは医学部を目指す受験生のために、科目別に勉強のコツをお伝えしていきます。
英語
英語の重点ポイントは4つ!
- 英単語は目指せ7000語!
- 文法は早めに一巡!
- 読解は精読⇒速読の順番で!
- 英作文対策も忘れずに!
英単語は基本から応用レベルまで、一般的な単語帳を3冊終わらせるつもりで取り組みましょう。また英語学習の基盤となるものですから、できるだけ早い時期に完成させるのがポイントです。
文法も早めに一巡できる計画を立てると良いでしょう。次に待ち受ける読解は、文法力や構文力、文構造を見つけられる力無しには進みません。
また「読解はスピードが大切!」といきなり速読にチャレンジする人がいますが、これはNG。多くの医学部は受験生の英語力を測るために、文構造のしっかりした質の高い英文を出してきます。こうした文章を正確に読めるようになるには、まず1文1文を構造を把握しながら正確に読めることが大切(「精読」と言います)。精読ができるようになって、はじめて速読に進めると考えてください。
英作文は20~30字程度の条件英作文を出す大学もあれば、200字程度の自由英作文を課すところもあります。志望大学の過去問に合わせて練習していきましょう。このとき、書いた文章は必ず添削してもらうことを忘れないでください。はじめはたどたどしい英文しか書けなくても大丈夫、続けていくうちに必ず完成度の高い英文が書けるようになりますよ。
★ 英語学習法について詳しくは、こちらもどうぞ!
『【医学部受験】英語対策完全ガイド!|元予備校校舎長が国公立、私立別に詳しく解説』
数学
数学はとにかく『基礎』が最重要です。国公立大志望生も私立大志望生も共通、正確で高い計算力と、各分野の本質的な理解、論理的に考える力をつけることを、とにかく学習の軸においてください。
こうした力を付けるためには、疑問を持ちながら勉強する姿勢が有効です。「どうしてそうなるのだろう」「どうしてこの解き方ではダメなんだろう」と考えることで、数学への理解が深まり、本当の意味で「わかった」と言えるようになります。
医学部受験生の中には「公式を覚えようとしたことはありません」という人もいるほど。彼に言わせると、「公式は覚えるものではなく、導くもの」なのだそうです。ライバルにはこうした人がいることを忘れないでください。
とくに現役生が注意したいのが「数Ⅲ」です。高2の冬から始まる学校の授業に合わせていては、受験本番までに十分な演習量が確保できないおそれがあります。医学部数学では必ず出る科目なので、数Ⅲは「独学で進める」覚悟を持つと良いでしょう。
また「微分・積分」「確率」「図形と方程式」はどの大学でも共通の頻出分野。迷ったらここから取り組んでみてください。近年は複数分野を融合させた総合的な問題も散見されます。過去問等を活用し、さまざまなバリエーションの問題に当たって経験値を積んでおくようにしましょう。
★ 数学学習法について詳しくは、こちらもどうぞ!
『【医学部受験】数学対策完全ガイド!|難問対策不要、「基礎」の習得だけで合格も夢じゃない』
理科
医学部受験では理科が2科目必要になりますが、多い組み合わせは「物理+化学」もしくは「化学+生物」でしょう。いずれも学習範囲は膨大なものになります。「暗記」と「計算」が織り交ざってくることも、受験生を悩ませるポイント。英数の基礎を早めに完成させ、理科にかけられる時間を確保するスケジュールを考えることから始めましょう。
物理・化学・生物、3教科に共通して言えるのは「とにかく基礎が大切」ということです。基礎とは事象や事項の定義や成り立ち、仕組みを本質から理解できているかどうか、ということ。
たとえば今勉強している範囲に対して、「どうしてその事象になるのか」「どうしてその現象が起きるのか」「AとBの類似点・相違点はなにか(理由も添えて)」と聞かれたら、教科書や参考書を見ずに解説できるでしょうか。自力で解説できるようになって、初めて「基礎が身についた」と言って良い状態になります。
また数Ⅲ同様、現役生は教科書の最後の分野が手薄になりやすい科目でもあります。たとえば物理の「原子」、化学の「高分子化合物」、生物の「進化と系統」といった箇所ですね。医学部入試ではこれらの単元も頻出です。比較的他の単元との関連性は薄く、独学でも進めやすい単元です。長期休暇など時間のあるときに先取りしてしまうのもおすすめです。
まとめ
医学部受験について、最初におさえておきたい基本知識や概要をまとめてきました。医学部は入るのも大変な学部ですが、入ってからが本当の勝負です。医師になるということは人の命を預かるということ。高い職業的使命感と倫理観が必要ですし、患者さんや看護師たちと円滑に意思疎通できる力、社会的な責任感も重要になります。学力に加えて高い人間性が求められる仕事でもあるのです。
医学部を目指すあなたには、ぜひ勉強の傍らで良いので「医師として生きるということ」の意味を考え続けてほしいと思います。面接のために「医師を志したきっかけ」は考えるでしょうが、ぜひ「医師になったあとの目標」も考えてみてください。そして出てきた答えこそが、あなたが目指す医師の姿です。頑張ってくださいね。
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