発達障害と不登校は関係してる?不登校を改善するためにできること
「発達障害だと不登校になりやすいの?」
「発達障害で不登校になった子の改善方法は?」
上記のような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
ここでは発達障害と不登校の関連性や、不登校に多い発達障害の種類を徹底解説します。不登校を改善するための支援方法も分かりやすく紹介。発達障害を持つ子の不登校に悩んでいる人はぜひ参考にしてください 。
目次
発達障害と不登校は関係しているの?
発達障害の子は不登校になりやすいと感じている人もいるのではないでしょうか。発達障害と不登校児に関連性はあるのか解説していきます。
発達障害とは
発達障害者支援法によると、発達障害を以下のように定義しています。
“第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう”
引用:出典:e-Govポータル 「発達障害者支援法」
発達障害は生まれつきの特性のため、小さい頃から特徴が現れるケースが多いです。日常生活に支障が出るケースで診断されます。
発達障害で見られる特性は誰もが少しは持っています。ただし、社会生活で困らなければ診断名はつきません。日常生活に支障が出て周りも本人も辛い状況が続いたとき、診断名がつけられます。
発達障害により学校で即別な配慮を受ける子供は年々増加傾向です。2020年度、通級指導を利用した小中高生は自閉スペクトラムで約2万6000人、多動性障害でも約2万5000人でした。どちらも前年度から増加しています。
不登校とは
不登校とは、病気や経済的理由以外の理由で、学校に登校できない状態を指します。法律では、不登校を以下のように定義しています。
“何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)とする。”
出典:義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律
文部科学省の調査では、不登校が理由の欠席日数が年間合計30日以上で不登校と判断されます。令和2年度の調査では、小・中学校の不登校人数が19万6,127人で、1,000人あたりの不登校人数は過去最多でした。
発達障害かつ不登校の子はどのくらいいるのか
発達障害を持つ子で不登校になってしまう子は不登校児全体の5%から40%位です。調査研究でも不登校が発達障害に関係しているという文献があります。
不登校になってから児童精神科を受診し、発達障害と診断されるケースも見られます。自分の持つ特性と生活環境が合わないのも不登校の一因でしょう。
不登校の子に多い発達障害①ASD:自閉スペクトラム症
不登校の子に多い発達障害として自閉スペクトラム症があります。よく見られるトラブル例とサポート方法を紹介していきます。
ASDの子のトラブル例
自閉スペクトラム症では、社会性、コミニュケーション能力、想像力の3つの障害を持つと言われています。集団生活が苦手な子が多く、環境が合わないと不登校になる恐れがあります。
社会性に関わる脳機能障害を持つため、集団行動の多い学校でトラブルを起こす事も。起こしやすいトラブルは以下の通りです。
- 冗談が通じず、言葉を真に受けてしまう
- 周りの意見を聞かず自分のこだわりを貫いてしまう
- 集団の音が気になりイライラしてしまう
- 勝ち負けにこだわり、負けるとパニックを起こす
- 時間へのこだわりが強く、予定時刻が過ぎるとパニックを起こす
自閉スペクトラム症は決まったスケジュールで過ごす方が安定します。しかし、予定変更の多い学校生活に納得いかず、パニックを起こしてしまうこともよくあります。
また、コミュニケーションが苦手なので、冗談を真に受けたり、集団行動から飛び出すことも。0点か100点かで物事を考えるため、勝つことにこだわりすぎて負けるとパニックを起こす子もよく見られます。
ASDの子へのサポート
自閉スペクトラム症の子が安定して過ごすには、次のようなサポートが必要です。
- あらかじめ予定を伝える(予定通りにいかないこともあるとも伝える)
- コミュニケーションをサポートする
- その場から離れて違う場所でのクールダウンを許す
- 周りの子供に特性への理解を求める
予定が分かると安心するタイプなら、前もって予定を確認するとトラブル回避につながります。時間を伝えるときは「だいたい〇時」と伝えるのがおすすめ。時間に幅を持たせると、多少時間が過ぎても仕方ないと思えるようになってきます。
嫌な場面から逃げることを許し、自分で気持ちの立て直しをさせるのも効果的です。パニックを起こしたら、安全な場所に連れていき落ち着くまで見守ります。
また、クラスメートに特性の理解を求めるのも大切です。苦手なことが多いけれど、練習中であることを伝えます。特性による行動をしても「そういう子なんだ」と見守ってくれる雰囲気ができるでしょう。
不登校の子に多い発達障害②ADHD:注意欠如・多動症
不登校の子に多い発達障害としてADHDも挙げられます。多動性や衝動性、不注意の特性を持つため、周りと衝突してしまう傾向が。ここでは、ADHDの子に多いトラブル例とサポート方法を解説します。
ADHDの子のトラブル例
障害理解のためには、ADHDの子が学校生活などで起こしやすいトラブルを知る必要があります。考えられるトラブル例は以下の通りです。
- 気に入らないことがあると手を出してしまう
- 人の気持ちを勝手に解釈し、筋違いな行動をとってしまう
- 集中力が続かない
- 集団にいられず教室から飛び出てしまう
- 授業中、勝手に話し出し授業を中断させてしまう
- 時間を守れず忘れ物が多い
- ぼーっとしていて次の行動に移るのが遅い
同じADHDでもタイプにより起きるトラブルの傾向が違います。衝動性が高く人が好きなタイプは、すぐけんかになってしまうなど友達関係でのトラブルが多いです。
多動タイプは、じっとしていられない「体の多動」と、しゃべり続けてしまう「口の多動」があります。どちらも、他の人から見ると自分勝手な行動に映るでしょう。
不注意が強いタイプは、忘れ物が多く約束の時間を忘れてしまうこともよくあります。集団行動でも遅れがちですが、時間を気にせずマイペースを貫く子もいます。
ADHDの子へのサポート
ADHDの子をサポートする際は特性を考えて行います。周りとの環境調整をしたり、本人の考え方を変える手立てをしたりする方法が良いでしょう。具体的なサポート例は以下の通りです。
- 落ち着いて生活できる環境を用意する
- アンガーマネジメントを教える
- 友達との関係を調整する
- 指示を文章に示し、確認できるようにする
- 必要であれば投薬治療を受ける
一番大事なことは本人が過ごしやすい環境作りです。例えば、雑音を全部聞き取ってしまうタイプは集団にいるのに苦痛を覚えるでしょう。音に対する感覚過敏は生まれつきの特性なので改善は難しいです。少人数で学習できる場所の確保で楽になるでしょう。
環境を整えて落ち着きが見られたら、怒りをコントロールするアンガーマネジメントを試してみるのもおすすめです。身につくまで時間がかかるため、大人が友人関係のサポートをしながら見守りましょう。
環境調整で落ち着かない場合は投薬治療を考える段階です。服薬で落ち着けば、自分を振り返る余裕も出るので、困った行動が減ってくるでしょう。
不登校の子に多い発達障害③LD:学習障害
学習障害も不登校の子によく見られる発達障害です。知能の遅れはありませんが、読み・書き・計算など特定の分野がなかなか身につきません。教科書を使った学習が始まる小学校以上で判明するケースが多いです。
LDの子のトラブル例
学習障害の子は他人とのトラブルは少ないですが、できないことを隠すような行動が見られます。具体的な例を紹介します。
- 自分ができないことに悩み心身の調子が悪くなる
- 分からないと言えずカンニングをしてしまう
- 何事にも消極的になってしまう
- 授業についていけなくなり、不登校になってしまう
できることとできないことのギャップが大きく「なんでできないんだろう」と本人も悩みます。知的に問題ないので、周りからさぼっていると見なされてしまうことも。苦しさの原因が学習障害にあると気づかず、自分を追い詰めて不登校になるケースもあります。
LDの子へのサポート
学習障害の子には、苦手なことを無理にやらせてはいけません。脳機能による特性なので、努力でカバーするのは難しいためです。学習障害の子供に合った具体的なサポート方法は以下の通りです。
- 苦手なものは道具を使ってサポートする
- 少しでも出来たらほめる
- 一対一など、少人数で学習する
苦手なことは道具でサポートするのがおすすめです。計算が苦手なら計算機、読むのが苦手なら文字を拡大する、書くのが苦手ならパソコン入力を覚えるなど、方法はたくさんあります。できることが増えたら「できたね!」とほめてあげましょう。
学習障害を持つ子は、大人数での学習だと人の目が気になり消極的になってしまうことも。家庭教師など、特性に理解のある先生と学んで自信をつけるのがよいでしょう。家で利用できるオンライン家庭教師なら、不登校気味の子供も学習しやすいのでおすすめです。
発達障害の子の不登校を改善するためにできること
発達障害の子の不登校を改善するため、子供への働きかけや環境調整などを工夫するとよいでしょう。ここでは、具体的な支援策を紹介します。
子どもを責めない
一番は、子供を責めないことです。特性のためにできないのだから仕方ないという気持ちで接しましょう。生まれつきの特性が原因なら、子供を責めても改善しないためです。
怒らず子供を受け入れた上で、どうしてトラブルを起こしたのか原因を探ります。どうするのが最善か、子供に聞くと自分なりに考えるはずです。一緒に対処法を考えると、似たようなトラブルを回避できるようになるでしょう。
子どものいいところをほめる
子供のいいところ、できたことを見つけてたくさんほめてあげましょう。反応が薄くても褒められているのは分かっているので、子供も嬉しいはずです。
ほめるには、子供の良い変化に気づくことが大事です。過去と比較するとほめるポイントが見つかりやすいです。「前はできていなかったけれど、できるようになったね」など、具体的な成長をほめると伝わりやすいでしょう。
登校を無理強いしない
発達障害が原因で不登校になった場合、登校を無理強いしてはいけません。無理やり学校に連れて行った結果、さらに調子が悪くなる恐れもあります。
休みが長くなると親はもどかしくなりますが、本人の気持ちに寄り添いながら進むのが一番です。休んでいる間に、学校と調整し過ごしやすい環境を作っておきましょう。子供が行きたいと思う日があれば、短時間からチャレンジさせるとよいでしょう。
自宅を安らげる場に
自宅は休む場所として、子供がくつろげる環境づくりをしましょう。発達障害の子供は、勉強するのは学校で、家は好きなことをする場と区別して考えがちです。家でも口うるさく注意してしまうと、気持ちが休まらず学校へ行く気力もなくなります。
学校に行けた日は、家では好きなことをしてのんびりしても良いでしょう。家庭で過ごす日はスケジュールを決めてメリハリをつけるのもおすすめです。
家や学校以外の場所をつくる
家や学校以外で過ごす場所を作るのも、不登校の改善につながります。頼れるコミュニティを複数もつことで、気持ちが楽になる場合もあるためです。
通う場所が学校だけだと、うまくいかなくなった時、他に頼れる場所がありません。習い事やフリースクールなど通う場所があると「1つうまくいかなくても他がある」という安心感が持てます。
本人が学校で楽に過ごせるような働きかけ
学校で楽に過ごせるような環境を求めていくのも、不登校改善に効果的です。学校に行こうと思えた時に備え、安心して過ごせる環境づくりを学校に提案しましょう。
まず、発達障害による不登校であることを、クラスメイトに理解してもらう必要があります。障害名は出さず、苦手なことが多く頑張っているというニュアンスで、教師から伝えてもらうと良いでしょう。
感覚過敏が強い子はクールダウンの場所を設ける、別室登校や特別支援学級への転籍で楽になる場合もあります。特別支援学級では本人の能力に合わせた学習ができるので、見学してみると良いでしょう。
第三者と連携する
不登校対応には、第三者との連携が不可欠です。家族だけで問題を抱え込まず、知識豊富な専門家の意見を取り入れると改善の糸口が見つかりやすいでしょう。
身近な連携先として、担任やスクールカウンセラーがあります。発達障害を受け入れている塾や、発達障害に理解のある家庭教師なら、学校に言いにくいことも相談できるでしょう。相談先が複数あると、さまざまな意見が聞けて参考になります。
支援機関に相談する
発達障害による二次障害などで不登校になっている場合は、支援機関に相談しましょう。利用できる施設には、教育支援センターや病院などがあります。
教育支援センターは、小中学校を長期休業している子が通える公的機関です。適応指導教室とも呼ばれ、2017年調査では約63%の自治体に設置されています。教員免許を持つ職員やカウンセラーなどが対応し、気持ちの安定や学習面のフォローを行います。
児童精神科や大学の臨床心理相談センターを利用するのも良いでしょう。WISCなどの検査を行い、結果のフィードバックを受けると効果的な接し方が分かります。学校へのアドバイスをもらうこともできるので、教師から質問事項を聞いておくと良いでしょう。
その子の特性に合わせた適切な対応を
発達障害の特性は一人ひとり違うため、特性に合わせて対応することが大切です。発達障害の種類により、対応方法が異なるためです。
不登校から発達障害と診断された場合、特性に対する周りの理解が少なく、つらい状況に置かれていたかもしれません。発達障害の基礎的な知識を得るなど特性理解から始めると子どもを理解するヒントとなります。
また、同じ診断名でも違う特性を持ち、困り感も人それぞれ違います。特性の基本的知識をもとに、子どもをよく観察し、何で困っているのか見極めることが大切です。特性に合った対処が見つかるでしょう。
まとめ
発達障害による不登校は、二次障害を起こしている場合もあり対処が難しいです。発達障害の種類により対応方法も違いますし、一緒に過ごす時間が長すぎて親子関係が悪化する場合もあるでしょう。
不登校の相談先は、学校やスクールカウンセラー、教育支援センターなど複数あります。家族だけで悩まず、病院や専門家の力を借りると気持ちが楽になるでしょう。
遅れがちな学習面のフォローは、オンライン家庭教師がおすすめです。好きな場所で学習できるので、子どもへの負担が少なく送迎もいりません。発達障害への理解があるオンライン家庭教師を選べば、本人のペースで無理なく学習できるでしょう。