【医学部受験】化学対策完全ガイド!|理論・有機・無機、分野別に効率的な対策も紹介
医学部受験で必須の理科科目といえば、化学!化学は理科の中でもとりわけ、計算と暗記の両方が必要となる科目です。範囲も広く、「どこから、どう手をつければよいのか分からない」「化学が苦手で困っている」という悩みもよくお聞きします。
今回は「医学部受験×化学」をテーマに、出題傾向や化学の全体像、効率的な勉強法、そしておすすめの参考書&問題集までまとめました。
最後まで読めば医学部受験に向けた化学対策はバッチリです。早速、今日から実践してみてくださいね。
医学部×化学の傾向と基本的な対策方針はこれ!
医学部受験では、出題傾向や特徴を正確に把握し、適切な対策を立てて臨む姿勢が欠かせません。
まず医学部受験で出題される化学について、よく知ることから始めましょう。
化学の問題には3タイプある
化学の問題は、難易度と特性で3つのタイプに分けられます。
スタンダードタイプ 基本問題。公式や知識を当てめれば、すんなり解ける問題。チャレンジタイプ 応用問題。複数の知識を組み合わせたり、発展的に思考したりすることで解ける問題。ジョーカータイプ 手をつけてはいけない問題。いわゆる奇問。高校範囲を超える知識が必要な問題や、奇抜な発想がないと解けない問題。 |
※ ネーミングは筆者オリジナル。
それぞれについて詳しくは、次の項目で解説します。
入試では「解いてはいけない問題」もある!
先ほど紹介した3つの問題タイプを深く見ていきましょう。
「(1) スタンダードタイプ」は、得点できなければいけない問題です。基本知識で解けるのですから、受験生ほぼ全員が正解すると考え臨みましょう。
得点差が生まれるのは「(2) チャレンジタイプ」の問題です。問題演習の熟練度や着眼点の鋭さ、最後まで解ききる計算体力といった要素が、正解と不正解を分ける境界になります。
そして、(2)への対策と同時に磨いておきたいのが、「(3) ジョーカータイプ」の見極め力です。ジョーカータイプとは、高校で学ぶ知識や定理、公式を超えた内容を知っていないと解けない問題を指します。あるいは奇抜な発想が必要な場合もあります。
手をつけても時間がかかるばかりで、一向に解けないのがジョーカータイプの特徴。これ、そもそも手をつけてはいけない問題です。
ジョーカータイプの問題は受験生を選抜するため、わかりやすく言うと得点差を大きくするために加えられています。
医学部受験生には、その問題がジョーカーかどうかを見抜く力が不可欠。ジョーカーだと適切に判断し、スタンダードとチャレンジに尽力する選択ができるかどうか、が大切です。
医学部でも大事なのはやはり「基礎力」
「医学部の化学は難しい」というイメージがあるのは、ジョーカータイプの問題が紛れ込むのが原因かもしれません。
しかし、そもそもジョーカー問題は手をつけなくてよい、ということが分かりました。解けないといけないのは、基本知識で解けるスタンダード問題と、基本の組み合わせで解けるチャレンジタイプの2つです。
医学部受験だからといって、難問奇問が解けないといけないということはありません。
スタンダードとチャレンジ、それぞれに必要なのは「基礎力」です。医学部受験生は、下の3つの基礎力を高いレベルで身につけることを最優先に考えていきましょう。
★医学部受験生が身につけるべき、化学の基礎力理論化学を丁寧に理解している正確でスピーディーな計算処理ができる有機・無機分野は確実に暗記している |
化学が「対策しやすい科目」といわれる理由
「化学は対策しやすい科目だ」
「化学は、勉強すればすぐ点数が伸びる」
そんな話を聞いたことがあるかもしれませんね。そしてこの話は、どちらも本当なのです。
ここからは「化学がお得な科目」といわれる理由を見ていきましょう。
まず化学の全体像を見てみよう
あらためて化学の全体像を考えてみると、分野相互の関係性はあまりないことが分かります。
- 理論化学(計算を基礎に、各分野が独立)
- 無機化学
- 有機化学
図にすると以下のようなイメージです。
各分野が独立した構造になっていると、なぜ「お得」で「対策しやすい」のでしょう?
化学は「各分野が独立している」から勉強が成果に直結する
分野相互の関係性が薄いので、化学はどこからでも手をつけられます。教科書の最初を飛ばし、できそうなところから手をつけても入試レベルまで一気に高めるられるのです。
数学だとこうはいきません。三角関数や指数対数、数列、ベクトルを飛ばして微分・積分は解けませんよね。これが積み上げ教科である数学にはない、分野独立教科である化学が持つアドバンテージです。
化学は分野を絞って集中対策すれば、あっという間にテストや模試で得点できるようになります。これが「勉強すればすぐ得点できる」といわれる理由です。
得点アップにつながりやすい、勉強の取り組み順はこれ!
勉強成果が得点にあらわれやすい化学ですが、やみくもに取り組んでも遠回りなだけ。得点アップにつながりやすい化学対策の順番を見ていきましょう。
★理論化学 おすすめの勉強順★①「モル/濃度/密度/体積などの単位換算」「化学反応式を使った計算問題」をマスターせよ。② ①ができれば、「酸塩基の反応」「酸化還元」は楽々なはず。③ あとは「熱化学」「気体」「溶液」「反応速度・化学平衡」どこからでもOK。 |
★無機化学・有機化学 おすすめの勉強順★① 前提:理論化学を一巡してからがおすすめ。理論が分かっていると理解が速いから。② 有機化学:理論を使っての理解が必要なので、理論の後がおすすめ。③ 無機化学:暗記が多い分野。最後にやると全体がつながり、理解が深まる。 |
理論化学は化学の根底を作るパートなので、はじめにやっておくのが有効。
理論の次に取り組むのは、有機化学がおすすめです。学んだ理論を発展させながら、有機化合物の構造決定問題に当たっていきましょう。
無機化学は最も理論・有機との関連が薄い、暗記メインの分野。最後に一気に覚えるのが、効率良く化学を進める順番です。
医学部の化学対策|分野別おすすめの勉強法
化学の基本的な対策方針がわかったところで、分野ごとに具体的な勉強法と注意点を見ていきましょう。
まず基本計算をマスターしよう
まずマスターしたいのは、基本的な計算です。正確で速い処理を目指し、繰り返し練習!
化学は理科の中でも計算量が多く厄介で、手間がかかるものが多く見られます。
小数点第4位なんていう計算は、化学以外ではほぼ見かけないのでは?「気体定数0.0083」という数字を、さらに分母にして有効数字3ケタで計算、しかも割り切れずに四捨五入とか……!
こうした厄介な計算には、正しい計算手順と効率的な計算方法を知っておくことが有効です。
たとえば二気体を混合し、反応をさせて温度変化を見るという問題に当たったとき、どのように計算しますか?「二気体の混合」「反応」「温度変化」の3要素をまとめて計算しようとすると、とても複雑です。
しかし一つひとつに分けて計算すれば、さほど厄介ではありません。
繰り返しになりますが、計算で重要なのは「正確さと速さの両立」です。時間内に解ききるためにも、計算のトレーニングには十分取り組みましょう。
理論分野/無機分野/有機分野
理論・無機・有機の各分野の勉強では、「はじめから深追いしない」ことが大切です。化学は極めようとするとどこまでも深く入り込める科目。一部分に固執した結果、受験勉強の時間が足りなくなっては本末転倒です。早めに全体を通せる計画を立てましょう。
理論化学は、化学全体の土台です。
公式や定理、定義を理解し、使いこなせる状態を目指してください。教科書や参考書を通して読み、「どんな内容が含まれているのか」「ボリュームはどれくらいか」を把握すると、先の見通しが立てやすくなるでしょう。
無機化学・有機化学は、暗記が多い分野です。
1つを完璧にしてから次に進もうとすると、延々と終わらない……、なんてことになりかねません。「ある程度」のところで次に進む、またある程度進んだら戻って復習する、とざっくり進めていく姿勢が有効です。
先の単元に進むと、過去の単元が急に理解できるようになるのはよくあること。深追いや固執は避け、「全体を何回も繰り返す」スタイルで進めていくのが効率的に化学を進めるコツです。
医学部の化学対策|国公立大・私立大の傾向と注意しておきたいこと
大学にはそれぞれ出題傾向があります。医学部も例外ではありませんが、「国公立大学か、私立大学か」で傾向が大きく異なるのが、医学部の特徴でしょう。
ここでは国公立大/私立大、それぞれの傾向をまとめていきます。
国公立大学 医学部医学科志望の場合
国公立大学医学部では、共通テスト対策と2次試験対策、それぞれ必要です。
共通テストは最低限87~90%の得点率を目標に据えましょう。2次試験対策を軸に、直前期に共通テストの仕様に合わせていくのがコツです。
>>数学の共通テスト対策について、詳しくはこちらもどうぞ!
「【共通テスト数学】9割も目指せる勉強法と厳選おすすめ参考書7選|すぐに使える対策満載」
さて大事な2次試験について。
医学部とはいえ、国公立大学では2次試験に医学部専用の問題が出されるわけではありません。他の理系学部と同じ問題が与えられます。
よって問題のレベルは標準的。ただし、他学部の受験生よりも答案の完成度が高く、高レベルでの競争になるのが医学科です。
受験勉強で取り組む問題は標準レベルで十分ですが、満点を目指して対策することが合格につながります。
私立大学 医学部医学科志望の場合
私大医学部の入試問題は、大学ごとに非常にバリエーション豊富です。志望大学の過去問をよく研究し、頻出分野や問題傾向を知ることから始めましょう。
冒頭でまとめた「ジョーカー問題」が出やすいのも私立大学です。また国公立大学や最難関私大医学科よりも、中堅私大医学科で難しい問題が出ることもあります。
ジョーカー問題や、誰も手が出ない難問は、初めから気にしないのが鉄則。さっさと見切りをつけて、解くべき問題に全力で取り組みましょう。
標準問題での競争になるということは、1問1問の完成度や知識量の差が合否を決めるということです。資料集や参考書の隅々まで読み、細かな知識もインプットしておきましょう。
医学部受験生におすすめの化学問題集5選
医学部受験生向けに、化学のおすすめ参考書&問題集を5つご紹介します。初級から実戦まで、徐々にレベルアップするように並べました。
問題集選びの参考にしてみてくださいね。
【改訂版】宇宙一わかりやすい高校化学シリーズ(学研プラス)
化学を初めて学ぶ人でも理解できる平易な解説が特徴なのが、『宇宙一わかりやすい高校化学シリーズ』です。1冊ごとに理論・無機・有機に分かれているので、苦手分野だけチェックしてみても良いでしょう。
イラストやたとえ話を豊富に使い、ビジュアルと理屈の両面から理解しやすい構成になっているのが特徴。子どもっぽい見た目のせいで「大学受験には向かない?」と思われがちですが、内容は高校化学の全範囲を網羅した本格派!化学が苦手な理系生は、ぜひ一度手にとって欲しい参考書です。
改訂版 大学入試 ゼロからはじめる 化学計算問題の解き方(KADOKAWA)
『大学入試 ゼロからはじめる 化学計算問題の解き方』は、化学で必須の計算問題に特化した問題集です。化学の計算が苦手だ、計算しているうちにわからなくなってしまう……、という受験生におすすめ。
ポイントは、一般の参考書では省略されがちな「立式の考え方」「計算過程」が詳しく書かれている点にあります。問題文のどこを見て、どう考え、どのように式を作ればよいかがわかるので、公式丸暗記に頼らない計算力が身につきますよ。
鎌田の理論化学の講義/福間の無機化学の講義/鎌田の有機化学の講義(旺文社)
『鎌田の理論化学の講義』『福間の無機化学の講義』『鎌田の有機化学の講義』は、理系受験生必携ともいえるベストセラー参考書です。化学の基本を入試レベルにつなげる絶妙な解説が人気の秘密。受験生が間違えやすいポイントを根本的に解決してくれます。
特におすすめなのは、化学の基本を完了し入試演習に入る受験生ですね。ちょっとした解説が理解を深める手助けとなり、スムーズに入試問題に入っていけます。ハイレベルな問題集前のつなぎにピッタリの1冊だといえるでしょう。
基礎問題精講/標準問題精講(旺文社)
『基礎問題精講』『標準問題精講』も入試問題集の定番問題集です。基礎~標準レベルの問題演習には『基礎問題精講』、応用問題や旧帝大・難関私立大向けの問題演習には『標準問題精講』というのが、およそのレベル感です。
この2冊は良問だけを厳選して収録しているので、基本に忠実な応用力が身につくと評判!また問題の解き方が的確であること、解説が分かりやすいことも人気の秘密でしょう。医学科受験生であれば、ぜひ標準レベルのマスターを目指してください。
化学 重要問題集(数研出版)
『化学 重要問題集』は傍用教材として採用する高校も多く、使っている高校生も多い1冊です。過去に出題された入試問題から良問を厳選して収録、しかも毎年最新版に改訂されています。問題量が多く、問題演習量としても十分です。
あらゆるパターンの問題に取り組めるので、最終仕上げにもピッタリ。「重要問題集にない問題は、入試にでない」といわれるほどの網羅性が評価されています。分からない問題がなくなるほどやり込めば、化学は怖いものなしと言って良いでしょう。
まとめ
医学部受験における化学について、傾向と対策を中心にまとめてきました。
医学部の問題は難しいというイメージが先行しがちですが、やはり最も大切なのは「基本」です。基本なくして応用はありません!
理論化学と計算から着手し、化学全体の基本を網羅する学習計画を立ててみましょう。また入試に間に合うように、過去問や実践問題の演習に取り組めるスケジュール感も大切です。
オンライン家庭教師ピースでは、医学部受験のご相談もお受けしています。志望大学医学部に最適な学習計画のご提案もおまかせ!
ご相談や体験授業は無料です。まずはお気軽にお問合せください。