【大学入試】総合型選抜とは?選考方法やAO入試からの変更点も詳しく解説
私立大学のほとんど、また国公立大学の半数以上が「総合型選抜」と呼ばれる選抜方式を採用しています。しかし、名前をみてもどのような選抜が行われるのか、よくわからない受験生も多いのではないでしょうか。数年前まで耳にしたAO入試との違いも気になります。
この記事では、大学入試における総合型選抜について、概要から具体的な対策まで解説します。受験生が疑問に思いやすいポイントも、Q&A形式でまとめました。
最後まで読み、大学を受ける選択肢の一つとして総合型選抜を検討してみてください。
目次
総合型選抜とは
総合型選抜は、2021年度入試から始まった大学入試選抜方式です。2020年度までは「AO入試」と呼ばれていました。
はじめに、総合型選抜の概要を解説します。
総合型選抜の狙い
総合型選抜は、大学・学部の「アドミッション・ポリシー」に合う受験生を選抜するのが狙いです。ペーパーテストでは測れない受験生の多様な長所を、文字通り「総合的に」見出します。選抜方式も学力検査一辺倒ではなく、さまざまなアプローチができるよう工夫されています。
入試日程
総合型選抜の入試日程は、以下のとおりです。年度や大学によって異なるため、かならず最新の募集要項で確認しましょう。
国公立大学
出願 | 9月下旬~10月上旬 |
試験 | 11月 |
発表 | 11~12月上旬/2月 |
国公立大学の総合型選抜は、1次・2次と2段階で選考される場合があります。1次は書類選考、2次が大学での試験です。
また共通テストを課される場合は、共通テスト終了後に合格発表となります。選考期間が長いのが特徴です。
私立大学
出願 | 9月~ |
試験 | 10~12月 |
発表 | 10~12月 |
私立大学の総合型選抜は、大学によって日程がさまざまです。難関大学では国立大学同様、1次選考・2次選考が行われる場合もあります。
比較的早い時期からエントリーを受け付ける大学もあるため、入試スケジュールはこまめにチェックしておきましょう。
試験科目
総合型選抜で課される試験科目には、次があります。
面接 | 大学の面接官と1対1、もしくは集団で行われる面接。意欲や目的意識が確認される。 |
小論文・作文 | テーマに沿って小論文を書く。制限時間内に完成させる記述力と、論旨を通す思考力が必要。 |
プレゼンテーション | お題に沿って試験官にプレゼンテーションを行う。他の受験生とのグループワークになる場合もある。 |
レポート提出 | あらかじめ与えたテーマに関するレポートを提出させ、合否判定の資料とする。 |
実技 | スポーツや音楽などの分野では、実技試験が課される場合もある。 |
体験・セミナー・スクーリング | 模擬授業やセミナー、実験などへの参加が出願条件となるケース。参加後は、レポートや課題を提出する。 |
試験結果のほか、調査書や提出書類なども踏まえ、総合的に合否が判定されます。
総合型選抜とAO入試との違い
総合型選抜は「学力を含めた総合力」が評価される点が、AO入試との違いです。
AO入試は面接や小論文など、学力検査以外の項目で合否が判定されていました。ところが総合型選抜になると、学力も重視されるように選抜方法が変更されています。
AO入試が総合型選抜に変わるきっかけとなったのは、大学入試改革です。文部科学省は改革の際に、以下の指示を大学に出しています。
調査書等の出願書類だけでなく、 (1)各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、 もしくは (2)「大学入学共通テスト」の少なくともいずれか1つの活用を必須化すること。 |
志願者本人の記載する資料(例:活動報告書、入学希望理由書、学修計画書等)を積極的に活用すること。 |
※ 引用:「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告(平成29年7月通知)」における多面的・総合的な評価の実施について【関連部分抜粋】|文部科学省
総合型選抜において、大学は何らかの形で受験生の学力をみなければならなくなりました。この点が、AO入試と総合型選抜の最大の違いです。
「アドミッションポリシー」とは
総合型選抜では「アドミッションポリシー」という単語が頻繁に登場します。理解できそうでよくわからない「アドミッションポリシー」、あらためて詳しく見てみましょう。
大学が求める学生像のこと
アドミッションポリシーとは、大学側が示す「こんな学生に入ってきてほしい」という学生像を示したものです。選抜の際も、受験生がアドミッションポリシーと合致しているかがチェックされます。
アドミッションポリシーは「課題解決力」「協調性」「主体性」など資質に関するものや、将来の志などに関するものもあります。
中には抽象的な言葉で書かれていたり、いまいちつかみどころがなかったりするものもあるため、不明な点があれば高校の先生に聞いてみましょう。
アドミッションポリシーの例
実際のアドミッションポリシーの例を紹介します。下線部に注目して読んでみてください。
◎ 早稲田大学 商学部
早稲田大学の建学の理念である『進取の精神』の涵養を目指す、一定の高い基礎学力を持ちながら、かつ知的好奇心が旺盛で、自分で計画を立て、種々の課題に積極的に立ち向かう意欲に満ちた個性的な学生を、全国各地や世界中から多数迎え入れる。
「学識ある実業家」の養成を創設以来の教育理念に掲げる本学部は、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力等のビジネス・スキルを修得する場であるとともに、それ以上に広い視野に立って経済社会を質・量ともに豊かにすることを目指す「商学」の基本理念を理解し、自らの使命や役割を認識した上で判断・行動しようとする人々の学びの場である。そのために、論理的思考力や社会科学の基礎となる学力が必要不可欠である。国際感覚・倫理観を兼ね備えた企 (起)業家精神を養い、深い学識と教養に裏付けられた実業家を目指し、ビジネスリーダーとして地球社会に貢献しようと志す学生を受け入れたいと考えている。
◎ 明治大学 理工学部
理工学部では、ものごとの本質を探究する理学と、その結果を応用して人間の福利を実現する工学は車の両輪であり、決して切り離すことはできないとの考え方から、理と工の融合を教育理念としています。
この理念のもと、高度な科学技術社会で活躍するために、学生一人ひとりが自立し、未来を切り開く能力を身につけることを教育目標としています。
こうした教育目標を達成するため、理工学部では次のような学生を求めています。
(1) 自らテーマを発見し、科学・技術教育全般から得られる知識と経験をもとに課題を解決する意欲のある学生
(2) 多面的な思考力と広い視野を持った学生
(3) 責任感と倫理観を持ち、国際的な感覚を身につける意欲のある学生
総合型選抜に出願できる受験生は
総合型選抜への出願条件を解説します。総合型選抜での受験を希望する受験生は、自身があてはまるかどうか、確認しておきましょう。
出願条件に合致すれば誰でもOK
総合型選抜は、アドミッションポリシーに合う受験生ならだれでも出願できます。
ただし大学によって「評定平均」「高校での履修科目」などの条件がつく場合があるので、要項を確認しましょう。
英検の取得やTOEICスコアなどを指定する大学もあります。
既卒生は制約がある場合も
大学の中には、総合型選抜への出願条件として「現役のみ」と指定する場合があります。ただし、数は多くはありません。ほとんどの大学は、既卒でも受験できます。
最新年度の要項で、出願条件をしっかり見ておきましょう。
総合型選抜の倍率
総合型選抜の倍率は、およそ2~5倍程度です。医学部や一部人気学部は、倍率が10倍を超えることもあります。
総合型選抜は志願理由書の作成や小論文・面接の対策など、受験勉強以外にやらなければならないことが多岐にわたります。対策に手間も時間もかかるため、敬遠する受験生も少なくありません。
とはいえ、決して「合格しやすい」といえる倍率でもないのは確かです。総合型選抜を受ける場合は、「なぜ自分はその大学を志望するのか」「大学に入って何をしたいのか」を徹底的に考え、自分の言葉で語れるようにしておきましょう。
総合型選抜に関するQ&A
総合型選抜について、よくある質問に回答します。受験を決める前に、わからない点はすべて解決しておきましょう。納得した状態で受験に臨むことが大切です。
Q2. 総合型選抜と一般選抜は併願できる?
A. できます。
総合型選抜は一般選抜より早い時期に合格が発表されます。万一、残念な結果になった場合でも、一般選抜で再チャレンジ可能です。
一般選抜では同じ大学にもう一度挑戦しても、別の大学を受けても構いません。
ただし総合型選抜と学校推薦型選抜は、基本的に併願できません。
Q2. 英検やTOEICスコアを持っていると有利になる?
A. 有利になる場合があります。出願条件となっている場合もあります。
英検の指定級以上を持っていると、選抜において得点換算などの優遇措置を受けられる大学もあります。また英検取得を出願条件とする大学もあるため、注意しましょう。
たとえば青山学院大学文学部英米文学科の総合型選抜に出願するためには、以下のいずれかを取得している必要があります。
B.TOEIC®Listening & Reading 730点以上、Speaking 130点以上、Writing 140点以上
C.TOEFL iBT® 68点以上
D.TEAP(4技能)300点以上
E.IELTS(Academic Module)オーバーオール・バンド・スコア 5.5以上
Q3. 総合型選抜はかならず合格できる?
A. いいえ、かならず合格できるとは限りません。
出願できれば合格がほぼ確約される指定校推薦とは異なり、総合型選抜は受験しても合格できるとは限りません。
例年、総合型選抜の倍率は2~5倍です。これは2~5人に1人が合格できることを意味します。
Q4. 総合型選抜の受験対策は?
A. 自分の考えをまとめることと、面接や小論文の対策をすることです。
総合型選抜は、受験生の意欲や学力、目標などを多面的に評価します。どのような角度から質問されても困らないように、自分の考えをしっかりまとめておきましょう。
大学の情報をしっかり集め、大学について詳しく知っておくことも大切です。「アドミッションポリシーは、つまりどのような学生のことなのか」「自分の経験や資質のどのような点が、アドミッションポリシーに合致しそうか」など、大学と自分とをつなげる作業を重ねましょう。
面接や小論文は、実際にやってみるのがおすすめ。学校や塾の先生にお願いし、添削・模擬面接にチャレンジしましょう。
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学力検査だけの一般選抜と異なり、総合型選抜ではさまざまな対策を講じなければなりません。志願理由書の作成だけでも大変なのに、さらに面接や小論文の対策、大学研究も加わります。もちろん、万一に備えて一般選抜対策も同時進行しておく必要があります。
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まとめ
総合型選抜は、大学のアドミッションポリシーに合致する受験生をさまざまな角度から選抜する、新しい入試方式です。学力がほぼ不問だったAO入試に比べて、調査書や共通テスト結果などで学力も合否判定資料となっている点に特徴があります。
総合型選抜を目指す受験生は、教科の勉強に加えて小論文や面接の対策にも取り組まなければなりません。受験生の負担は増えますが、しかし「なぜその大学に行きたいのか」をあらためてじっくり考える機会となるでしょう。
合格発表時期も早いため、一般選抜との併願も可能です。誰にも負けない得意分野がある受験生、誰よりもその大学に行きたい熱意が強い受験生、ぜひ総合型選抜に挑戦してみましょう。