きょうだい間で学習格差がある…どう対応すればいい？
「同じように育てているはずなのに、どうしてこんなに違うんだろう？」
きょうだいを育てていると、学力や得意なこと、苦手なことに大きな差があることに気づき、戸惑う保護者の方も多いのではないでしょうか。
きょうだい間の学力差は、決して「どちらかが劣っている」ということではありません。それは、一人ひとりが違う個性を持つ、かけがえのない存在である証拠です。
きょうだい間の学力差に悩む保護者の方に向けて、その背景にある理由や、お子さん一人ひとりの個性を尊重しながら、それぞれの学習意欲を育むためのヒントを解説します。
きょうだいで学習格差があるのは普通のこと
きょうだい間で学力に差があることは、決して珍しいことではありません。それは、それぞれが違う個性を持つ、かけがえのない存在だからです。「どうして上の子（下の子）はできるのに、うちの子は…」と悩む必要はありません。その差が生まれる背景には、いくつかの自然な理由があります。
生まれ持った個性や発達のスピードが違う
きょうだいは、同じ親から生まれても、性格、興味の対象、そして得意なことは全く異なります。 一つのことに集中して深く掘り下げるのが得意な子もいれば、好奇心旺盛で様々なことに浅く広く興味を持つ子もいます。また、物事を論理的に考えるのが得意な子もいれば、感覚的に理解するのが得意な子もいます。
これらは、生まれつきの個性であり、学習スタイルや学力の差として現れるのはごく自然なことです。勉強が苦手に見えても、別の分野で素晴らしい才能を発揮していることはよくあります。
親の関わり方や環境が違う
きょうだいは、同じ家庭で育っても、親からの関わり方は全く同じではありません。
- 第一子（長子）
親も初めての子育てで、完璧を求めがちになることがあります。親の期待に応えようと頑張る反面、プレッシャーを感じやすい傾向があります。
- 第二子以降（中間子・末子）
親も子育てに慣れ、上の子との比較の中で個性を伸ばそうと、より自由にのびのびと育つ傾向があります。
このように、親の接し方や、生まれた時の家庭の状況（経済状況、親の年齢など）が違うため、育つ環境はきょうだいでも異なります。 これが、それぞれの学習への姿勢や意欲に影響を与えているのです。
良いところを見つけて、自信を育む
きょうだい間で学力差がある時、最も大切なのは、お子さん一人ひとりの「良いところ」を見つけることです。
- 学習面以外でも褒める
勉強以外の得意なことや好きなこと、頑張っていること（スポーツ、芸術、友だちとの関係など）を積極的に褒めましょう。
- お子さん自身の過去と比べる
きょうだいを比べるのではなく、お子さん自身の過去と比べましょう。
「前は苦手だったけど、今回はできるようになったね」
「先月より点数が上がったね」
「毎日欠かさず宿題をやっていて、えらいね」
このように、お子さん自身の成長を具体的に褒めることで、「頑張れば報われる」「自分はできる」という成功体験を積み重ねることができます。この成功体験が、次の学習への意欲につながります。
きょうだいの学習格差は、決して「問題」ではありません。それは、お子さんたちがそれぞれ違う個性を持つ、かけがえのない存在だという証拠です。お子さん一人ひとりの「やる気」を見つけ、その個性を尊重した関わりをすることで、お子さんたちはきっと、自分らしく輝く道を見つけるでしょう。
お互いに良いところを伸ばすことが大切
きょうだい間で学力差がある時、最も大切なのは、「比べないこと」です。
きょうだいに学習格差がある時、親が一番やってはいけないことは、「比較すること」です。
「お兄ちゃんはできるのに、どうしてあなたはできないの？」
「弟はこんなに成績がいいのに…」
こうした言葉は、子どもの心を深く傷つけ、劣等感を植え付けてしまいます。また、親の期待に応えられない自分を責め、「どうせ自分はダメだ」と、自己肯定感を著しく低下させてしまう原因となります。
学習面以外で、それぞれの「良いところ」を見つける
学習面で差がある時こそ、勉強以外の良いところに目を向けることが大切です。
- スポーツが得意
サッカーや野球、水泳など、体を動かすことが得意なら、その能力を最大限に伸ばしてあげましょう。スポーツを通して、協調性やリーダーシップ、努力する姿勢を学ぶことができます。
- 芸術的センスがある
絵を描くこと、楽器を演奏すること、歌うことなどが好きなら、その才能を伸ばしてあげましょう。芸術は、感性や表現力を育む上で非常に重要です。
- 優しい心を持っている
お年寄りに席を譲ったり、困っている友達を助けたり、下の子の面倒見が良かったりなど、優しい心を持つことは、何よりも尊い才能です。そうした人間性を褒めてあげましょう。
きょうだいの学習格差を縮める方法はある？
きょうだいの学習格差を縮めるには、お子さん一人ひとりの個性と向き合い、それぞれの「やる気」を引き出すことが大切です。ここでは、親ができる具体的な方法を3つ紹介します。
それぞれの「やる気になるスイッチ」を見つける
子どもが「勉強しよう」と思うきっかけは、一人ひとり違います。お子さんのタイプを理解し、それに合わせた声かけや環境づくりをすることで、やる気を引き出すことができます。
- 褒められたいタイプ
テストの点数だけでなく、「毎日宿題をやっていてえらいね」など、努力の過程を具体的に褒めましょう。
- 競争心があるタイプ
ゲーム形式の学習アプリや、タイムを競うドリルなどで、学習をゲーム化してみましょう。
- 知的好奇心が強いタイプ
お子さんの「なぜ？」を大切にしましょう。図鑑や科学館、歴史ドラマなどを通して、学習そのものの楽しさを伝えてあげましょう。
学習方法の多様化
一つの学習方法にこだわらず、お子さんの個性や得意なことに合わせた多様な方法を試してみましょう。
- 読書好きのお子さん
読書を通して語彙力や読解力を伸ばすことができます。興味のある分野の図鑑や小説を一緒に探してみましょう。
- 体を動かすのが好きなお子さん
ゲーム感覚で学べるアプリや、オンライン学習など、五感を使いながら学べる方法を試してみましょう。
- じっくり考えるのが得意なお子さん
個別指導塾や通信教育で、自分のペースで学習を進めるのが向いているかもしれません。
親も一緒に学習を楽しむ姿を見せる
親が「勉強は嫌なもの」という態度を見せると、子どもも同じように感じてしまいます。読書をする、資格の勉強をするなど、親が学ぶことを楽しむ姿を見せることで、子どもは「学ぶことは楽しいことなんだ」と自然に感じられるようになります。
お子さんの「やる気」を見つけ、その個性を尊重した関わりをすることで、お子さんたちはきっと、自分らしい学びの道を見つけるでしょう。
【長子・中間子・末子】やる気の出る声かけ
生まれた順番によって、子どもたちが持つ個性や強みは異なります。それぞれの特徴を理解し、それに合わせた声かけをすることで、お子さんの学習意欲をぐっと引き上げることができます。
長子（第一子）
真面目で責任感が強く、親の期待に応えようと頑張る傾向があります。完璧主義で、失敗を恐れるあまり、新しいことに挑戦することをためらうこともあります。
長子には、努力や存在そのものを認める言葉が効果的です。結果だけでなく、頑張る過程を具体的に褒めてあげましょう。
- 「いつも頑張っているね」
プレッシャーを感じやすい長子には、日々の努力を認めてあげることで、安心感を与えられます。
- 「〇〇がいてくれるから、ママ（パパ）は助かっているよ」
親の役に立っているという実感が、責任感の強い長子の自己肯定感を高めます。
- 「失敗しても大丈夫だよ。挑戦したことがすごいことだよ」
失敗を恐れずに新しいことに挑戦できるように、安心感を与えましょう。
中間子
協調性が高く、物事を客観的に見ることができます。上の子と下の子の間に埋もれてしまいがちで、自分の存在価値に悩むこともあります。
中間子には、個性を尊重し、特別な存在であることを伝える言葉が効果的です。自分の意見や考えが受け入れられていると感じることで、自信を持つことができます。
- 「〇〇の意見、聞いてくれる？」
自分の意見が大切にされていると感じることで、自己肯定感が育まれます。
- 「〇〇がいてくれると、この家は明るくなるね」
存在そのものを褒めることで、誰とも比べられない特別な存在であることを伝えます。
- 「これ、〇〇にしかできないことだね」
他のきょうだいと比較せず、お子さん独自の才能や個性を認めてあげましょう。
末子
親やきょうだいに甘えるのが上手で、自由奔放な性格が多い傾向があります。新しいことへの挑戦に躊躇がなく、失敗を恐れない反面、集中力が続かないこともあります。
末子には、挑戦を応援し、安心感を与える言葉が効果的です。自由に挑戦できる環境があることで、やる気を引き出せます。
- 「〇〇がやりたいこと、やってみようか」
興味があることに対して、自由に挑戦する機会を与えましょう。
- 「失敗しても大丈夫だよ」
失敗しても受け入れてもらえるという安心感が、次の挑戦への原動力になります。
- 「すごい！よく最後までやり遂げたね」
集中力が続かないことがあるため、最後までやり遂げたことを具体的に褒めてあげましょう。
きょうだいで学力差がある時、親ができること
きょうだい間で学力差があるとき、親ができる最も大切なことは、お子さん一人ひとりの個性と向き合い、それぞれの自己肯定感を育むことです。
比較をやめる
口に出して比較するだけでなく、心の中で「どうしてこの子はできないんだろう」と考えるのもやめましょう。心の中での比較は、無意識のうちにお子さんへの態度や言葉に現れてしまうことがあります。
お子さん自身と比べる:
きょうだいを比べるのではなく、お子さん自身の過去の姿と比べましょう。「前は苦手だったけど、今回はできるようになったね」「先月より点数が上がったね」など、お子さんの成長を具体的に褒めることが、自信につながります。
学習以外の良いところを見つける
「勉強だけがすべてではない」ということを、お子さんに伝えてあげましょう。学力で差がある時こそ、学習以外の良いところに目を向けるチャンスです。
スポーツ、芸術、人間関係など:
お子さんの得意な分野や、頑張っていることを具体的に褒めましょう。例えば、「絵を描くのが上手だね」「友達に優しく接していて、ママ（パパ）は嬉しいよ」など、お子さんの個性や人間性を認めてあげることが、自己肯定感を育む上で非常に重要です。
安心して話せる「心の居場所」を作る
成績や進路についてだけでなく、日々の学校生活や友人関係など、お子さんが何でも安心して話せるような信頼関係を築きましょう。
- 「いつでもあなたの味方だよ」
成績が思わしくなくても、親が「いつでもあなたの味方だよ」という姿勢を見せることで、お子さんは心の安定を得て、学習にも前向きに取り組めるようになります。
- 「何か困っていることはない？」
お子さんから話すのを待つだけでなく、親から「何か困っていることはない？」と優しく問いかけることで、お子さんが抱えている悩みを引き出すきっかけになります。
きょうだい間の学力差は、決して問題ではありません。それは、それぞれが違う個性を持つ、かけがえのない存在だという証拠なのです。
まとめ
きょうだい間で学力差があることは、決して珍しいことではありません。それは、それぞれが持つ個性や発達のスピード、興味の対象が違うために起こる、ごく自然なことです。大切なのは、「比べない」こと。そして、「一人ひとりの個性を尊重する」ことです。
勉強が苦手な子どもを否定するのではなく、学習以外の得意なことや良いところを見つけて褒めてあげることで、自己肯定感を育むことができます。また、それぞれの「やる気になるスイッチ」を見つけ、それに合わせた声かけや学習方法を試してみることも有効です。
親が「学びは楽しいものだ」という姿勢を見せながら、それぞれの個性を大切にした関わりをすることで、お子さんたちはきっと、自分らしい学びの道を見つけるでしょう。親ができることは、お子さんの最も身近な理解者であり、一番の応援団になることです。