結局、過去問は何年分解くべきなのか。赤本の使い方も含めて解説します
「過去問は何年分くらいやればいいのか」「たまに『25年分』という人もいるようだが、現実的に無理では…」、大学入試の過去問をめぐっては毎年このような悩みが寄せられます。
大学入試の問題を解くのは、時間も気力も必要です。他の勉強もあることを考えると、過去問にばかり時間を費やせないというのもわかります。一方で過去問を知らないまま勉強をすすめるのも、少し不安になるのではないでしょうか。
大学入試の過去問は、いったい何年分やれば良いのか。
ズバリ、その疑問に答えていきます。
あわせて過去問を解くべき時期や効果的な進め方も解説しました。第一志望大学への合格を目指し、過去問との付き合い方を知る参考にしてください。
目次
【結論】第一志望なら5~10年分、第二志望以下は2~3年分
赤本を解く最適な年数は、第一志望大学と第二志望校以下で異なります。
第一志望大学は、時間が許す限り多めに・第二志望校以下は最小限の対策に抑えるのがコツです。
赤本を解くべき年数と、その理由を解説します。
第一志望はたっぷり解いておきたい
第一志望大学の過去問は、最低5年・できれば10年以上分を解いておきましょう。
入試問題は、「大問数の増減」「頻出分野が出ない」など、ある年突然大きく傾向が変わることがよくあります。数年分しか過去問を解いていないと昨年前の傾向にしか対応できず、実際に変化があったときに柔軟に対応できない場合があります。
また小さな変化は毎年のように発生しています。まとまった年数の過去問を解いておくと、大学で起きやすい変化に気付け、多少のことならすぐ対応できるようになります。
実際、大学受験を終えた先輩たちに第一志望大学の過去問を何年分解いたか調査すると、3割が4~6年分ほどを解いたと解答しています。
また10年分を解いた先輩も3割、11年分以上と回答した先輩も2割ほどいました。
志望大学の難度が上がるほど、しっかり解き込む先輩が多いようです。
第二志望以下は時間と相談しながら
大学受験では、受験生1人あたり平均して3~4校を受験します。5~6校受ける人も珍しくなく、中には7校以上という人もいます。受験校数が増えるため、第二志望以下も1大学あたり5~10年分解いていては、受験勉強をする時間が足りなくなります。
学習スケジュールを調整しながら、1大学あたり2~3年分を目安に取り組みましょう。
先輩たちも、第二志望以下の過去問は「2年分解いた」との回答が25%ほど、「3年分解いた」との回答が40%を占めます。
また、第一志望校以外でどの大学を受験するかは、共通テストが終わった1月下旬から決まり始めます。1月下旬にならないと第二志望以下が確定せず、どの大学の過去問を解けばよいかも決まりません。
第二志望以下の過去問練習は1月下旬から2月本番までのほんの短い間におこなうため、そもそも5年分解くほどの時間がとれないという事情もあります。
過去問を解く目的
過去問は、なぜ解く必要があるのでしょうか。
「傾向を知るため」「時間配分を決めるため」など、さまざまな答えが思い浮かびます。
目的を理解した上で取り組むのと、「みんながやってるから」と盲目的に取り組むのとでは結果に差が出て当然です。
合格への距離を少しでも短くするために、過去問を解く目的を考えてみましょう。
大学の出題傾向や難易度を知るため
大学受験は、大学(学部)によって特徴的な出題がされます。3つの国立大学の、英語の出題例を見てみましょう。
大学名 | 試験時間 | 大問数 | 内容 |
---|---|---|---|
名古屋大学 | 105分 | 4題 |
|
筑波大学 | 120分 | 3題 |
|
金沢大学 | 90分 | 3題 |
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当然、問題文で出やすいテーマや出題難易度、解答形式も異なります。
さらに私立大学は学部ごとにも問題が変わります。
自分が受ける予定の大学・学部が、例年どのような問題を出しているのか、正しく知っておくのが過去問を解く目的の1つ目です。
実際に解き、実力とのホントの差を体感するため
過去問を解くと「意外と解ける!」「いや、やっぱり難しい…」と、解いたからこそ実力との差を体感できます。
この「体感」が、過去問を解く目的の1つです。
いまは「〇〇大学 過去問 傾向」と検索すれば、予備校や塾、教育系YouTuberなどがまとめた情報が容易に手に入ります。「第1問は標準的なレベル、基礎を大切に~」「第4問は難問が出やすい。対策は~」と、細かく解説されておりとても参考になります。
ただし注意したいのは、こうした情報にある「基本的」「標準」「難しい」などの評価は、基準がさまざまだということです。ある人にとっては標準的な問題でも、別の人は難しく感じ、また別の人にとっては得意なタイプの問題かもしれません。
受験情報をいくら読み込んでも「自分にとってのホントのところ」はわからないのです。
実際に解き、実力との差を体感することで、ホントの情報がわかります。
勉強計画の精度を上げるため
過去問を解くと、勉強量や実力がまだまだ不足している部分が見えてきます。「実力不足の箇所を見つける」のも、過去問に取り組む目的です。
見つけた不足を克服できるよう勉強計画を修正し、受験勉強の精度を上げましょう。
とくに「すでに習っている・演習が終わっているのに、解けない」部分は要注意です。本来、解けてもよい問題が解けないのは、「知識・解き方を忘れている」「基礎が定着していない」など、根本的な問題を抱えているケースが多いためです。
放置して解決できる問題ではないため、かならず勉強計画を見直しましょう。
過去問を解く時期
気になるのは、過去問は「いつごろから取り掛かるべきか」という点でしょう。「過去問を解くと実力試しができる問題がなくなってしまう、だから直前まで取っておきたい」と思うのは間違いです。
大学別過去問は、高3の夏休みには手を付けましょう。
過去問を解くベストなタイミングを解説します。
高3の夏休みからスタート
高3の夏休みに過去問を解いておきたい理由は、次の3つです。
- まとまった時間が取れるため
- 未習範囲が少なくなるため
- 見つけた苦手や不足を秋に補うため
夏休みは、受験生がまとまった学習時間をとれるほぼ最後のタイミングです。冬休みは共通テスト直前であり、大学別の過去問を解く余裕はありません。
また高3の夏休みになると、未習範囲がかなり少なくなります。大学の問題が解きやすくなるのも、夏休みに過去問に取り組みたい理由です。
さらに、過去問を解いて苦手や実力不足が見つかっても、夏休みならまだ間に合います。秋に苦手対策をする時間がとれるためです。
大手予備校でも受験生には「高3夏休みに過去問研究をする」よう指導しています。ライバルに後れをとらないためにも、夏休みに一通りの過去問を解いてみましょう。
本腰を入れるのは冬以降
本腰を入れて過去問の勉強を始めるのは、冬以降です。もっといえば、共通テストが終わってからです。
国公立大学志望の受験生は、共通テストの結果次第で志望校が変わる場合があります。実際に出願するのは、夏に一生懸命過去問研究に取り組んだ大学ではないかもしれません。
出願が終わり、受験大学が決まったら本腰を入れて過去問に取り組みましょう。
過去問の効果的な使い方
過去問は、ちょっとしたコツに気を付けて解くだけで効果がグンとアップします。
過去問を解く前に押さえておきたいコツを6つ、解説します。
赤本には書き込まない
過去問は、傾向を頭に入れるために何度も見返し繰り返し解きます。復習する際に書き込みがあると、書きこんだ内容が問題を解く際の“余分な情報”になってしまいます。
赤本は書き込みをせず使いましょう。
ただ実際には「下線を引きたい」「図形に補助線を書き込みたい」など、書き込みが必要となるはずです。
また赤本は、本来B4~A3程度の用紙に印刷されている問題を赤本サイズに縮小して掲載しています。英文の文字、数学の図形など、すべてが必要以上に小さくなっているため、拡大コピーすると使いやすくなります。
時間を測って解く
過去問は、かならず制限時間を正確に計って解きましょう。本番では、数秒でも時間の超過は許されません。「あと5秒あれば書ききれたのに」という惜しい失点を失くすためにも、練習の段階から時間を秒単位で正確に計り、時間内に解ききる力を付けることが大切です。
また制限時間内に解けた部分と解けなかった部分は、区別できるようにしておきましょう。解けなかった問題は、時間を超えたことがわかるようにした上でチャレンジします。
「解けなかった問題は番号に印をつける」「ペンの色を変えて続きを解く」などの方法がわかりやすく、おすすめです。
解けなかった問題を、いかに時間内に収めるか戦略を考え、再チャレンジしてみてください。
復習をする
過去問を解いたら、かならず復習しましょう。
同じ問題が同じ大学で再度出題されることはありませんが、他の大学で似た問題が出題される可能性はあります。一度解いた問題は、かならず解けるようにしておくことが大切です。
復習では「なぜできなかったのか」「どうすればできるようになるか」といった弱点克服の視点を重視してください。
解けなかった問題の解法を覚えるだけでは不十分です。参考書で基本を確認し、類題を解き、次に同じ問題が出たら自信を持って解ききれる状態にまで高めましょう。
わからない問題は質問し解決する
赤本は、決して解説が充実しているとはいえません。解説を読んでも解き方が理解できない場合、学校や塾の先生に質問し解決しましょう。
ただし、過去問レベルの問題になると、いくら先生でも即答できる人は稀です。先生が解いている時間をただ待つのは時間がもったいないため、問題を預けて後日あらためて解説を聞きに行くようにしましょう。
自分が解いたプロセス(ノートなど)も持っていくと、思考過程のミスを指摘してもらえる可能性があります。
論述問題は添削を受ける
国語や地歴、小論文などの論述型問題を解いたら、添削してもらいましょう。学校の先生、あるいは塾や予備校の先生に問題と解答を預け、赤入れを依頼してください。
プロに添削してもらうと、自分では気づけないミスや論理の不整合が見つかります。またより端的で適切な言い回しも教えてもらえるかもしれません。
赤本は論述問題の解答を省略している場合があります。「解答がないから」と答え合わせをあきらめるのではなく、利用できる手段は使い切る心づもりで取り組んでください。
共通テストの過去問は何年分解くべき?
大学受験の過去問には「共通テスト」もあります。共通テストの過去問は、何年分ほど解くのがベストでしょうか。
共通テスト過去問の使い方を解説します。
共通テスト+センター試験で5~8年分
共通テスト自体が新しい試験のため、過去問を解く際はセンター試験分も活用しましょう。
- 2021年度入試以降:共通テスト
- 2020年度入試まで:センター試験
2つの試験をあわせて5~8年分を解くのが理想です。
2015年度入試分以降は、現行の新過程に対応しています。2015年以前の問題は教科書の課程が異なるため、使う際には注意しましょう。
共通テスト予想問題も活用しよう
共通テストは過去問のほか、予想問題集も活用できます。
河合塾・駿台・Z会などが共通テスト予想問題集を出版しています。問題の難易度は、河合塾がもっとも標準(共通テスト本番に近い)で、次いで駿台、Z会の順に難しくなります。
自分のレベルや目標に合わせた予想問題も活用し、共通テストの形式や傾向に慣れていきましょう。
過去問を手に入れる方法
いざ、過去問を解く前には必要な問題を入手しておく必要があります。
過去問を手に入れる方法を、3つ解説します。
購入する
第一志望大学の過去問は、最新版を手に入れましょう。書店やネットショップで、最新の赤本を購入してください。
赤本は毎年5月ごろから最新年度のものが出版されはじめ、9月~10月に出そろいます。
第二志望以下の大学の過去問、あるいは最新版の出版前に赤本が欲しい場合などは、古書店を探してみましょう。「ブックオフ」は、比較的どの店舗でも赤本を豊富にラインナップしています。
先輩に譲ってもらう
合格し赤本が不要になった先輩から譲ってもらうという方法もあります。費用がかからない点がメリットですが、書き込みや破損がある可能性は踏まえておきましょう。
また塾によっては、先輩から不要になった赤本を集め、後輩に譲るイベントを開催するところもあります。
ダウンロードする
過去問はインターネットからのダウンロードでも入手できます。有名なサイトを3つ、紹介します。
◎ 東進過去問データベース
190大学28年分を無料で閲覧・ダウンロード可能。無料の会員登録が必要。
https://www.toshin-kakomon.com/
◎ 旺文社パスナビ「大学入試過去問一覧」
国公立大や難関・有名私立大学を中心に約180大学の過去問を公開。無料会員登録が必要。
https://passnavi.evidus.com/plus/exam/
◎ 河合塾 大学入試解答速報
毎年、共通テストと難関大学の解答速報を配信。共通テストは解説動画付き。
https://www.kawai-juku.ac.jp/nyushi/
過去問対策ならオンライン家庭教師ピースへ
大学の過去問、また共通テストの過去問対策は、戦略的な取り組みが成否を分けます。「いつ・どのくらい・どのような目的で解くのか」を押さえ、計画立てて進めましょう。
とはいえ、初めて大学受験を受ける高校3年生は、戦略・計画といわれてもよくわからないのが本音ではないでしょうか。
そんなときは、プロの手を借りるのがおすすめです。
自宅でマンツーマン指導が受けられるオンライン家庭教師なら、自分のペースにあわせて最適な過去問対策が実現します。
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まとめ
過去問は、高3夏休みからスタートしましょう。まず1年分を解き、実力不足や弱点を発見します。秋以降の学習で克服し、直前期に本格的にやり込んでください。
第一志望の過去問は5年~10年分を、第二志望以下の過去問はスケジュールと相談しながら2~3年分に取り組みます。
過去問を解いた後は、見直しと復習も忘れずに行います。受験生にとって復習がいらない問題は、本番だけだと知っておいてください。
過去問の進め方や質問解決で困ったことがあれば、オンライン家庭教師など個別に計画を立ててもらえる教育サービスに相談するのがおすすめです。