本当に国語力を伸ばせる勉強方法は?|読書は大切、でもそれだけじゃダメ!
「国語力は大切」、この言葉に異論がある親御さんはいないでしょう。国語力はすべての学習の土台であり、国語以外の成績にも影響を与える大切な力です。
しかし一方で、国語力とはあまりに概念的・抽象的で、いったい何をどうすれば伸ばせるのかと悩む人が多いのではないでしょうか。
この記事では、国語力を定義からあらためて考えていきます。「読書をすれば国語力が伸びる」という誤解を解き、家庭でできる国語力を伸ばす取り組みを具体的に紹介します。また国語力の伸長を促す学習法も解説しました。
国語力が伸びれば、すべての教科が伸びる可能性があります。最後まで読み、国語力と学力をワンランクアップさせるヒントとしてください。
目次
「国語力」とは
「国語力」は、教科としての国語で良い点数をとれる力だけを指すのではありません。国語のテストでの高得点は国語力がもたらす結果の1つではありますが、国語力はもっと多くの概念を含みます。
国語力は論理的思考力にも置き換えられます。言葉を正しく使い、物事や事実を理解し、自分なりの解釈を加えながら発展的に考えられる力のことです。
文部科学省は、国語力は2つの要素から成るとしています。
◎これからの時代に求められる国語力の構造
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(参考:第2 これからの時代に求められる国語力|文部科学省)
「言葉をたくさん知っているだけ」「プレゼンが得意なだけ」ではこれからの時代に必要な国語力としては不十分です。
言葉を使って思考する力を多方面に深化させ、さらに思考を支える知識や教養を幅広く持っている状態が「国語力がある」状態だといえます。
「国語力が低下している」は事実
子どもたちの国語力は、近年低下しているといわれます。
OECD(経済協力開発機構)が2018年に実施した「生徒の学習到達度調査(PISA)」では日本の子どもたちに関して以下の結果が出ています。
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(参考:OECD生徒の学習到達度調査(PISA)|国立教育政策研究所)
また別の調査では、調査対象となった現役教員の8割が「子どもたちの国語力の弱さを感じている」と回答したこともわかっています。
PISAの調査では、日本の子どもたちは「根拠や理由を明確にしつつ、自分の考えを述べること」「テキストから情報を探し出すこと」「テキストの質と信憑性を評価すること」などに課題があるとされました。
こうした力が必要なのは、国語に限った話ではありません。算数・数学でも理科でも、社会でも、もちろん入試でも大切です。
国語力の低下は、学力全体の低下につながりかねない危険性を秘めています。
「国語力を伸ばすには読書をすれば良い」が間違っている理由
「国語力を伸ばしたければ、読書が一番」と、安易に考える人もいます。たしかに、読書は国語において大切です。
しかし、この考え方は一部分では正しく、一部分では正しくない点に注意しなければなりません。
読書で国語力を伸ばすためには、読書によって伸ばせる国語力の領域を正しく理解しておくことが大切です。
読書と国語力の関係について、解説します。
読書で伸ばせる力は国語力の一部
国語力とは論理的思考力であると、先に書きました。
論理的思考力を伸ばすには、いわゆる評論文(説明文)を読み思考を鍛えるのが一番です。評論文は論理に従って書かれており、論理を追う力が要求される題材だからです。
しかし、楽しみとして読書をするときに、子どもたちはどのような本を選んでいるでしょうか?小説や物語、学習マンガ、ライトノベルなどが多いはずです。
小説や物語で身につけられるのは、語彙力や表現技法、心情を想像する力などです。論理的思考力は身につけられません。
さらに「サラッと読める」ライトノベルでは、語彙力すら身につかないかもしれません。
小説や物語、学習漫画、ライトノベルにも、それぞれの良さがあります。こうした本を読んではいけないと言っているのではない点はご理解ください。
お伝えしたいのは「国語力を伸ばす=読書」と安易に結びつけても、選ぶ本によっては期待通りの効果が得られない可能性があるという点です。
「うちの子、読書が好きなのに国語が伸びないんです」と悩む親御さんは、まずお子さんがどのような本を読んでいるか見てみてください。ライトノベルばかりでは、いくら読んでも国語力の伸びは期待できません。
国語力を伸ばす本の読み方
読書をしても国語力を伸ばせるとは限らないなら、読書はしても意味がない・読書をしなくても良いかというと、そうではありません。
読書にはきちんと効果があります。
文部科学省も「これからの時代に求められる国語力」の中で、読書は「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」のいずれにも関連し、さらに国語の知識等の領域とも密接な関連があり、国語力を高める上では読書が極めて重要であるとしています。
国語力を伸ばすためは、「国語的な」本の読み方を身につけることが大切です。
国語的な本の読み方とは、自分の解釈や想像をできるだけ排除し、書かれている内容を書かれている通りに正確に理解する力です。
文章を雰囲気で理解するのではなく、文字情報を正確に把握し、理解する訓練を意識しなければなりません。
書かれている内容を正確に理解するには、語彙力や教養、思考力が必要です。読書は、「書かれている通りに理解しようとする」姿勢を持つことで初めて、国語力を伸ばせる学習方法となります。
今日からできる国語力を伸ばす取り組み4つ
国語力を伸ばしたいからといって、「気合いを入れて評論文を読ませよう!」「今日からライトノベルは禁止!」と極端な手法をとる必要はありません。
国語力は、実は日常生活でも伸ばせます。
今日からすぐに取り入れられる、国語力を伸ばす生活の工夫を4つ解説します。
家庭内の会話を意識する
家庭内で何気なく交わされる会話を意識するだけで、「語彙力」「表現力」に良い影響を与えられます。
まず、親御さん自身が豊富な語彙をつかって表現するよう意識してみましょう。
たとえば「ヤバい」「エグい」などのスラングは禁止です。「ヤバい」「エグい」は1つの言葉で多様な意味を表せてしまうため、より的確な語彙を身につけるチャンスを奪います。
「ヤバい」ではなく、「ほくほくでとても美味しい」「世相を的確に批判していて痛烈なコントだ」など、具体的な表現を使ってみてください。
子どもは親の発言をよく聞いています。
親御さんが言葉を変えれば、お子さんにもかならず良い影響を与えます。
【POINT】 この方法は「親御さんが先に言葉を変える」のがうまくいくコツです。お子さんに「今日から“ヤバい” “エグい”は禁止ね」と一方的に伝えるのは簡単ですが、禁止しておきながら親御さんが「ヤバい」と使っていてはお子さんの反発心を招きます。 「ヤバい」を使わなければどのような表現になるのか、親御さんが率先垂範してあげましょう。 |
興味がある分野の本を与える
私たちが日常生活で使う語彙には、限りがあります。日常の中で「改悛」「琴線」「コンテキスト」といった言葉が登場するケースは、多くはないでしょう。
しかし国語で扱う題材には、こうした国語的なキーワードが登場します。
国語力に欠かせない「語彙」をさらに豊富なものにするために、本を活用してみてください。
国語力を伸ばすには、小説・物語、学習マンガ、ライトノベル以外であることが大切です。お子さんの関心のある分野の本を探し、渡してみてください。
【POINT】 お子さんに合う本は、書店の「児童書」コーナーに行くと見つかります。 児童書コーナーの一角にある「子どもにも読みやすい新書や評論文」を探してみてください。『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』『新 13歳のハローワーク』などは、大人もぜひ読んでおきたいおすすめ図書です。 高校生以上には、大人向けの書籍でOKです。 また図鑑や解説書は、周辺知識や教養を高めるためにも有効です。 |
ニュースやSNSで話題の「気になるトピック」を調べる
文部科学省が定義する「これからの時代に求められる国語力」にも含まれる、知識や教養、価値観、感性などを育むためには、気になるトピックの深掘りがおすすめです。
ニュースやSNSで話題となったトピックをピックアップし、背景や結果、私たちの生活への影響などを調べてみましょう。
戦争や国際情勢、経済など、難しいテーマを取り上げなくても大丈夫です。お子さんが興味を持てる内容であることを優先し、テーマを選んでみてください。
【POINT】 たとえば「季節外れの寒波による大雪」という身近なテーマを調べるとしましょう。 「なぜこの場所に雪が降ったのか」「なぜこの地域は、雪による影響が大きいのか」と地政学的なアプローチをすれば、社会(地理)方面の教養が深まります。 「異常な雪は昔から降っていたのか」と調べれば、歴史への理解につながるでしょう。 「なぜ大雪になったのか」「大雪になるメカニズムは何か」と考えると、理科(地学・気象)の知識が豊かになるはずです。 1つのテーマでも深掘りする方向によって、多様な学びが得られます。 |
「プレゼン制」の交渉を取り入れる
家庭でプレゼン制を取り入れてみましょう。「こうしたい」という希望は、理由や根拠、メリット、将来的な展望などを含めたプレゼンで伝えるようにします。
プレゼンをし要求を飲んでもらうには、要求そのものをじっくり考える必要があります(思考力)。どのように伝えれば相手の納得を引き出せるかも工夫し(表現力)、伝え方の順番にも気を配るでしょう(論理展開力)。
また要求をよく理解してもらうためにさまざまな言い方を取り入れるかもしれません(語彙力)。
国語力を総合的に伸ばせるのが、プレゼンテーションです。親から子、子から親の双方向で、ぜひ取り入れてみてください。
【POINT】 家庭内プレゼンは、親子お互いが「本気になれる」題材を選ぶとうまくいきます。
「こんなテーマで良いのか」と不安を感じるくらい、軽めの題材から始めるのがポイントです。慣れてきたら、徐々に扱うテーマの種類を増やしていきましょう。 |
国語力を伸ばす文章の読み方5つ
普段の宿題やテスト勉強も、ちょっとしたポイントを意識するだけで国語力を伸ばす学習に早変わりします。
テストや入試にも生きる、国語力を伸ばせる文章の読み方・勉強の仕方を解説します。
知らない言葉はかならず調べる
読んでいる文章中に初見の言葉、意味を正しく理解できていない言葉が出てきたら、かならず辞書で調べましょう。
日本語、とくに熟語は漢字で表記されることが多いため、字面だけで「なんとなく」意味は理解できる気がしてしまいます。しかし論理的国語力にとって「なんとなく」は大敵です。
何となく言葉を解釈し、何となく文章の大意を把握しても、何となくの答えしか導けないためです。
語彙力とは、正しい意味を知っている言葉の量にほかなりません。
知らない言葉、意味があいまいな言葉は、かならず正確な意味を押さえましょう。
ただし、辞書に書かれている内容がよくわからないというケースもあります。国語の単語帳・用語集なども活用し、平易に理解できる工夫をしてみてください。
『「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』日本能率協会マネジメントセンター
文章の「主旨・要旨」を見つける
文章を読むときは、主旨・要旨(軸となるテーマ)の発見を意識します。主旨や要旨は漫然と読んでいても見つからないため、主体的な姿勢を育むのにも役立ちます。
主旨・要旨は、テーマと筆者の主張に分けて考えると見つかります。
- テーマ:政治、経済、社会、環境、文化、歴史など、論じている題材
- 筆者の主張:筆者がもっとも言いたいこと。賛成・反対、またその根拠
事実と筆者の主張は混同しやすいので注意します。2色のマーカーで、事実と主張を塗り分けるのもおすすめ。また事実関係と主張を抜粋したメモをつくるのも、本文理解が深まる学習法です。
段落ごと「要約」する
評論文は、何かしら意図を持ったカタマリで段落分けされています。
段落ごとの要約で「段落の主旨」をつかみ、段落の主旨を並べて順を追うと文章全体の主旨が把握できます。
「本文が長くて、途中で何を言っているのかわからなくなる」場合は、ぜひ段落単位で主旨をつかむ練習をしてみてください。
段落の要約が難しければ、段落ごとに「タイトル(見出し)」を付ける練習もおすすめです。その段落が一番言いたいことを端的にあらわすタイトルを考えようとする時間は、最も中心的なトピックを探す練習になります。
背景や場面、心情を言葉にする
小説や物語文では、物語の背景や場面、登場人物の心情変化を言葉に表す練習をしましょう。
背景も場面も心情も、サラッと読むと読み飛ばせてしまう要素です。頭の中にイメージが浮かび、ビジュアルで理解を進めるタイプもいるでしょう。
しかしテストの解答では、脳内のイメージを言語化しなければなりません。脳内イメージはきわめて主観的であるため、言語で客観的に表現し相手に伝えるには訓練が必要です。
日頃から言葉にあらわす練習を重ね、実戦力を伸ばしましょう。
音読する
音読をすると、読む人が文章をどの程度理解しているかが如実にわかります。
ためしに、次の文章を音読してみてください。
前条第一項の規定により国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えている保存義務者又は同条第二項の規定により国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えている保存義務者は、財務省令で定める場合には、当該国税関係帳簿又は当該国税関係書類の全部又は一部について、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿又は当該国税関係書類に係る電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存をもって当該国税関係帳簿又は当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存に代えることができる。 |
「見ているだけでクラクラしてくる」人も多いでしょうが、途中で「何を言っているのかよくわからない」「声には出しているが、内容はまったく理解できない」人が多かったのではないでしょうか。
それもそのはず、上の文章は平成10年に定められた「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」の一部だからです。専門家でないかぎり法令の文章に日常的に触れる人は多くないため、いきなり法令を読まされても理解できなくて当然です。
しかし「理解できていない文章は、スラスラ読めない」ことは実感できたはずです。
音読をすると、文章をどの程度理解できているかがすぐ把握できます。お子さんの実力を知るためにも、教科書や問題集の文章を音読させてみてください。
表現力を伸ばす勉強法
「テストや入試の国語で確実に得点できる」「小論文やディベートなどの入試科目も楽々クリアできる」、そんな実力を身につけるためには表現力のトレーニングが必要です。
どんなに文章を理解できていても、伝えるべき内容を正しく表現できなければ、得点にはなりません。
国語力最後の関門である表現力を伸ばす勉強法を、まとめて解説します。
表現力とは
表現力とは、相手や場面を踏まえた適切な手段を用い、伝えたいことをあらわす力をいいます。国語はもちろん、他教科や芸術、コミュニケーションにも欠かせない力です。
国語に限れば、表現力は次のように定義できます。
- 読解した内容を正しく相手に伝える力
- 設問に応じて解答を端的にまとめ表す力
- 記述問題や小論文など、多彩な設問に合わせて工夫できる力
国語のテストや入試での高得点につながる表現力の磨き方を見ていきましょう。
書く前の「段取り」が重要だと理解する
まず、どのような表現方法でも書く前の段取りが重要だと理解してください。
やってはいけないのは、段取りを組まずいきなり解答用紙に書き始めるパターンです。書くべき内容や順番、文字数配分のバランスを考慮していないため、書いている途中で「何を書いているのかわからなくなった」「文字数が足りなくなった/余った」と失敗する原因になります。
書き始める前に「どの情報を」「どれくらいのバランスで」「どんな順番で」書くべきか、全体の段取りを組みましょう。
求められていることを正しく把握する
求められていることとは、設問が要求している内容にほかなりません。書こうとしている内容が設問と本当に合致しているか、あらためて確認してみましょう。
よくある失敗例を紹介します。
- 「理由を書け」という指示なのに、理由を書いていない
- 「説明せよ」という指示なのに、話を展開させている
- 「要約せよ」という指示なのに、感想文になっている
- 文字数制限に従っていない
記述式の問題や小論文は、ともすると「書くこと」に没頭してしまい、冷静な判断ができなくなってしまう場合があります。
客観的な視点を忘れずに、書く前にかならず設問と書こうとしている内容を俯瞰するようにしてください。
「相手に伝わること」を意識して書く
表現は、相手に伝わって初めて意味を成します。どんなに優れた内容を書いても、相手に伝わらなければ得点になりません。
誰が読んでも理解できることを大切に、言葉の使い方や文章構造を意識して書きましょう。
注意したいポイントは、以下のとおりです。
- 若者言葉や流行りの表現、仲間内だけで伝わるスラングは使わない
- 文章の主語と述語を一貫させる
- 接続詞を正しく使う(「つまり」の後ろは言い換え、など)
- ひとつの文章が長くなりすぎないように気を付ける
国語力を伸ばすのにおすすめの題材・教材
国語力を伸ばせる題材や教材は、身近なところにたくさんあります。
「書き写し」「語彙の意味調べ」は、取り掛かりやすい題材です。お子さんが興味を持っているテーマを使い、正しく書き写す練習や意味を調べ語彙を増やす練習をしてみてください。
読解の仕方を解説した問題集や参考書は、中学生以上におすすめです。「1日1題」「週末に2題」などペースを決めて進めましょう。
市販の新書や文芸書も、中学生以上なら理解できるはずです。話題の人が書いた書籍や読みやすいテーマから、チャレンジしてみてください。読み終わった後に面白かったポイントや要点を親御さんに伝える機会をつくると、内容が記憶に残りやすくなります。
まとめ
国語力とは、私たちが論理的に物事を考える際に欠かせない力です。豊富な語彙と客観的理解、そして自分なりの解釈は、思考世界を広げる土台となります。
国語力の養成に読書が果たす役割は大きい、これは事実です。しかしお子さんに本を与え、読ませていさえすれば国語力が伸びるかというとそうではありません。
国語力は「書籍」「日常生活」の両輪で伸びる力です。親御さんが使う語彙や表現を多様にし、国語力を伸ばす取り組みを生活の中で実践していきましょう。
また、塾や家庭教師の力を借りるのもおすすめです。自宅で受講できるオンライン家庭教師なら、指導の様子を親御さんも視聴できます。相性の合う講師の紹介で定評がある「オンライン家庭教師ピース」の国語指導を、まずは試してみてください。