【高校受験】スポーツ推薦の基礎知識!流れやメリット・デメリットを徹底解説
「中学の部活動で優秀な成績を残せた」「高校でも同じスポーツを頑張りたい」、そんなお子さんには、スポーツ推薦で高校受験する方法もあります。スポーツ推薦は一般選抜との併願が可能なため、実質的に「高校受験のチャンスが2回になる」お得な制度です。
しかし、「どれくらいの成績があればスポーツ推薦に受かるのか」「お子さんには難しいのではないか」と不安になる方も多いでしょう。
この記事ではスポーツ推薦について詳細に解説し、メリットやデメリット、実際の選抜要項の例などを解説します。最後まで読み、お子さんの高校受験に新しい可能性をひらくヒントにしてください。
目次
高校入試における「スポーツ推薦」とは?
高校入試でのスポーツ推薦とは、中学時代にスポーツで優秀な成績を修めた生徒に対し入試の特別枠を設け、選抜する制度です。誰でも出願できるわけではなく、必要な条件が定められています。また検査当日は実技試験が課される場合が多いのも特徴です。
スポーツ推薦の概要を解説します。
出願条件
スポーツ推薦で受験するには、都道府県教育委員会や学校ごとに定められた出願要件を満たしていなければなりません。またどのスポーツで募集を行うかは、高校ごとに異なります。
たとえば東京都立高校では、スポーツ推薦の出願要件を次のとおりさだめています。(例として東京都を取り上げましたが、どの自治体の公立高校もおおむね同じです。)
引用:「令和5年度東京都立高等学校に入学を希望する皆さんへ」|東京都教育委員会
出願要件のポイントは、「中学校長の推薦が必要」である点です。また出願基準は高校が別途定めています。都立高校のスポーツ推薦では、多くの学校で以下を満たすことが必要です。
- 中学時代に該当スポーツの部活動・クラブチームに所属していたこと
- 部活動・クラブチームでの活動を3年間継続したこと
- 高校入学後も同じスポーツを継続する意思があること
強豪校では、さらに「都大会出場レベルの実力のある者」などの条件が加わる場合もあります。
私立高校のスポーツ推薦出願要件は、「都道府県大会で8位以上に入賞」「関東大会や全国大会への出場実績」など、具体的な成績が示されます。もちろん、高校入学後も同じスポーツに打ち込む意思があることも条件です。
さらに「評定平均」「欠席日数」などを指定する高校もあります。
検査・試験科目
公立高校のスポーツ推薦では、次の項目で検査が行われます。
- 調査書
- 面接(集団/個人)
- 実技検査
学校によっては総合問題や作文・小論文を課す場合もあります。項目ごとの比重(満点)は学校ごとに異なります。
私立高校のスポーツ推薦では、次のような学校ごとに定められた試験が行われます。
- 調査書
- 出身学校長の推薦書
- 面接(集団/個人)
- 作文・小論文
- 大会・コンクール等の実績
公立高校同様、どの項目に比重が置かれるかは学校ごとに異なります。
入試・合格発表時期
公立高校・私立高校とも、選抜試験や合格発表は一般選抜に先だって行われます。選抜試験は1月末~2月上旬、合格発表が2月上旬には出そろうのが一般的です。
スポーツ推薦は一般選抜との併願が可能です。万一、スポーツ推薦で不合格となっても、一般選抜への出願が間に合うスケジュールになっています
スポーツ推薦を希望する中学生が高校側の目に留まる方法
スポーツ推薦で強豪校への進学を目指す場合は、この章をしっかりチェックしてください。選抜試験前に高校側の目に留まり、「注目選手」と思ってもらえる方法を2つ紹介します。
スカウトの目に留まる
スカウトとは、高校のコーチ陣が中学校の地区大会を視察し、有望選手をピックアップすることをいいます。大会で発見された有望選手には、中3秋ごろに中学校長や部活動の顧問を通じて声がかかります。
いわゆる、「うちの高校にぜひ来てほしい」と勧誘を受けるケースです。
スカウトを受けるには、「県大会で上位の成績を修める」「全国大会に出場する」「選抜チームに選ばれる」など、優秀な実績が求められます。
スカウトされたからといって、選抜試験を受けなくてよいわけではありません。スポーツ推薦の試験受験が必要です。ただし「ぜひ来てほしい生徒だ」とコーチ陣が学校に掛け合うため、スカウトを受けていない生徒より合格しやすいといわれます。
練習会やオーディションに参加する
高校側の目に留まるためには、志望校の部活練習に参加する、オーディションに参加するなどの方法もあります。
とくに私立高校の多くはスポーツ推薦に大会の成績基準を設けているため、残念ながら緒戦で敗退してしまうと出願できません。それでも本当に実力がある選手や、たまたま怪我をして出られなかった場合などに、高校にアピールするチャンスとなります。
ただし、自分だけで勝手に参加してはいけません。中学の部活動の顧問を通じ高校に連絡を取ってもらい、正式な手続きを経て参加しましょう。
スポーツ推薦で高校受験するメリット
スポーツ推薦は特技を活かして受験できるだけでなく、「受験勉強の負担が軽くなる」「特待生制度が使える場合がある」などのメリットもあります。
スポーツ推薦で高校受験した場合に得られるメリットを解説します。
受験勉強の負担が少ない
スポーツ推薦の最大のメリットは、一般選抜に向けた5教科の受験勉強をしなくても良い点です。
スポーツ推薦で5教科、あるいは3教科の学力試験を課す高校はほぼありません。2月~3月に行われる一般選抜の“一発勝負”試験に向けた勉強をしなくて良い点は、時間的にも心理的にも負担が少なく、大きなメリットだといえます。
放課後も後輩に混じって部活で練習することも可能ですし、高校入学後に向けてクラブチームなどでレベルアップを図る活動も可能でしょう。
ただし、まったく勉強しなくて良いわけではありません。スポーツ推薦では調査書も重要な合否判定資料として扱われます。調査書には中3時点の成績も記入されるため、定期テストの成績を大きく落とさないよう気を付けましょう。学習への態度も成績に加味されるため、授業はしっかり受け、提出物は必ず出すといった取り組みも大切です。
特待制度を使える可能性がある
お子さんが大会などで優秀な成績を修め、今後も活躍が見込める場合など「特待生制度」の対象になることもあります。
特待生制度とは、学業やスポーツなど特定の分野で秀でた生徒に対し、入学金や授業料の減免を行い、経済的な負担を軽減する制度です。金額や人数の上限はあるため、誰でも受けられるわけではありませんが、高校側が制度として持っている場合は対象になるか確認してみても良いでしょう。
特待生の選抜は入試結果で行う場合と、調査書などの書類審査で行われる場合とがあります。
スポーツ推薦で高校受験するデメリット
スポーツ推薦には「部活を辞めにくい」「受験直前期の振る舞いが難しい」といった注意点もあります。スポーツ推薦を考えているご家庭は、注意して読んでみてください。
高校で部活を辞めにくくなる
スポーツ推薦は、高校入学後もスポーツを続ける条件で受けられる選抜制度です。入学後に「気分が変わった」「別のスポーツをやりたくなった」となっても、部活を簡単には辞められません。高校3年間も同じスポーツに打ち込む覚悟を持って受ける姿勢が大切です。
万一、高校入学後に部活を辞めた場合は、次年度以降、出身中学に高校からスポーツ推薦の枠がなくなるなどの関係悪化につながるおそれもあります。またスポーツ推薦によって特待生制度を受けていた場合は、支援も打ち切られます。都合で長期間練習できない、継続が難しい場合は、勝手に退部するのではなく、必ず顧問に相談してください。マネージャーとして部に残るなど、活躍できる場を用意してもらえる場合もあります。
受験期の立ち回りが難しくなる
スポーツ推薦では、一般選抜よりも早い時期に合格が決まります。周囲の同級生が一般選抜に向けて緊張感を持って勉強しているときに、自分は進路が決まっているため、振る舞い方に気を使わなければならくなる点も知っておきましょう。
一人だけ浮かれた雰囲気でいると、周囲の緊張感を乱すことにもなり、「合格したからって、いい気になって」と後ろ指をさされるかもしれません。
もちろん、スポーツ推薦も努力の結果が実っての合格のため、負い目を感じる必要はありません。ただ周りの受験生はまだ勉強を本気で頑張っていることを忘れずに、気遣いある行動を心がけましょう。
スポーツ推薦実施校の例と選抜項目
スポーツ推薦は、多くの高校で実施されています。実際、どの高校がどのような項目で選抜しているのか、また定員はどれくらいかなど、具体例を解説します。
例として東京都内の高校をピックアップしました。スポーツ推薦の実施状況は、公立高校なら教育委員会の「高校入試課」ホームページ、私立高校は学校ホームページの「入試情報」から確認できます。
東京都立高校のスポーツ推薦実施校(一例)
都立高校でスポーツ推薦を実施している高校の一例を紹介します。都立高校でスポーツ推薦の対象となるスポーツは、主に次のとおりです。
- 野球
- バスケットボール
- サッカー
- 陸上競技
- 剣道
- バドミントン
- ハンドボール など
2022年の高校野球西東京大会(夏)で優勝した日大三高に、準々決勝で惜しくも敗れた藤森高校のスポーツ推薦実施状況は次のとおりです。
種目 | 定員 | 条件 | 検査項目(満点) |
---|---|---|---|
硬式野球 | 5人(男子) |
|
調査書(500) 集団面接(200) 実技検査(300) |
引用:「令和4年度文化・スポーツ等特別推薦実施校の選抜方法等一覧」|東京都教育委員会
富士森高校は硬式野球のほか、バスケットボール・サッカー・陸上競技(中長距離)でもスポーツ推薦を実施しています。
都内屈指のサッカー強豪校として知られる東久留米高校では、サッカーのみスポーツ推薦を実施しています。
種目 | 定員 | 条件 | 検査項目(満点) |
---|---|---|---|
硬式野球 | 5人(男子) |
|
調査書(900) 個人面接(300) 実技検査(300) |
引用:「令和4年度文化・スポーツ等特別推薦実施校の選抜方法等一覧」|東京都教育委員会
「校技がサッカー」という高校なだけあって、都立高校ながらサッカーの実績が出願基準に加えられています。先に紹介した富士森高校(野球)と比較して、調査書の配点比重が高い点も特徴です。
東京都内私立高校
数々のプロ野球選手を輩出してきたことでも知られる野球界の名門・早稲田実業高校では、野球をはじめさまざまなスポーツで推薦を行っています。
◎ 早稲田実業高校 推薦入試実施スポーツ
- 男子
剣道、硬式テニス、硬式野球、ゴルフ、サッカー(フットサルを除く)、柔道、ソフトボール、卓球、軟式テニス、軟式野球、ハンドボール、バスケットボール、バレーボール、米式蹴球、ラグビー、陸上競技(トラック種目・駅伝) - 女子
剣道、硬式テニス、ゴルフ、柔道、卓球、軟式テニス、バスケットボール、陸上競技(トラック種目・駅伝)
※ 2023年度入試の場合
早稲田実業高校のスポーツ推薦に出願できるのは、「スポーツで優秀な成績(都道府県大会で8位以内入賞、全国・関東大会等出場など)を修めた」「学年評定が高校の規定を超えている」「学年の欠席日数が原則として7日以内」など、条件をクリアした生徒だけです。
また事前に行われる「活動実績資格相談」にも参加しなければなりません。
私立高校のスポーツ推薦は、高校によって条件がさまざまです。また「出願にあたっては本校強化指定クラブ監督との事前相談が必要(帝京高校)」「スポーツ推薦及びスポーツ奨学生 今年度も実施の予定があります。詳しくは本校各運動部顧問にお問い合わせください。(東京高校)」など、詳細は高校に直接、あるいは顧問を通じての相談が必要な場合もあります。募集要項をよく確認しましょう。
スポーツ推薦で高校受験する際の注意点
スポーツ推薦で高校受験する場合の注意点をまとめました。準備が必要な項目もあるため、漏れのないよう丁寧に準備を勧めましょう。
出願要件を満たしているか確認する
まず、志望校の出願要件を確認し、お子さんが要件を満たしているかチェックしましょう。
公立高校は大会実績等は不問の学校が多い一方、私立高校は大会実績を重視します。また調査書の評定平均などの規定を設ける高校もあります。
部活に関する要件は顧問に、成績や調査書などに関する要件は担任の先生に問い合わせてください。学校長の推薦書は、担任の先生を通じて依頼します。
事前準備で必要なものがあるか確認する
高校によっては、年内などに練習会や相談会への参加を条件にする場合があります。要項をしっかり確認し、必要な機会には参加しておきましょう。
またスポーツ推薦を希望する場合は、早めに顧問の先生に相談しておくのがベターです。スポーツ推薦に関する情報を教えてもらえる場合もあります。
実技試験の準備を入念に行う
スポーツ推薦では、該当スポーツの実技試験が課されます。どのような試験が課されるか顧問に問い合わせ、直前まで入念に練習しておきましょう。
スポーツ推薦において実技試験は重視されます。緊張して実力を発揮できないことがないよう、顧問に模擬試験を依頼するのもおすすめです。
冬場の練習になるため、体調管理や感染症予防に配慮してあげてください。
まとめ
スポーツ推薦の概要やメリット・デメリット、スポーツ推薦の実施例、受験の注意点などについて解説してきました。
スポーツ推薦で合格したい場合、部活動にしっかり取り組み結果を残すこと、また学業も手を抜かず調査書評定を上げておくことが一番の対策になります。日頃の学習と部活との両立を誰よりも意識し、努力を積み重ねましょう
スポーツ推薦での合格には、顧問の協力が不可欠です。日頃から良い人間関係を築き、良い支援を得られるよう気を配ることも大切です。